「転職35歳限界説」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。読んで字のごとく、転職は35歳までが限界とされ、35歳を超えると転職の難度が急激に上昇することを表しています。

しかし、「転職35歳限界説」は一昔前の定説です。2018年1月25日の日経新聞(電子版)で投稿された「40歳からの転職術 崩れる「35歳限界説」」の掲題が示す通り、近年では30代以上のいわゆる「ミドル層」の採用が活発化しているのです。

転職市場の「35歳限界説」が崩れつつある。人材不足を背景に最近では40代以上向けの市場が広がる。

2018/1/28 日本経済新聞 電子版より

そうはいっても、年齢が上がるに連れて転職難易度が高まるのは間違いありません。本稿ではミドル層の転職活動に焦点を絞り、求められている人材や、おすすめの転職方法などをご紹介していきます。

1.転職市場におけるミドル層の定義とは?

ミドル 転職

まずは、本稿における「ミドル層」の定義についてまとめたいと思います。

中間の段階や階級を示すミドルですが、この“中間”には2つの意味があります。それは「年齢」と「年収」です。

年齢としての“ミドル”

人材紹介会社のエン・ジャパン株式会社がまとめた「ミドルの求人動向調査」によると、調査の対象者は35歳以上の転職希望者とされています。

また、同社のサイト利用者を対象にした「ご自身を定義する言葉」アンケートによると30歳後半~50代前半の7割以上が自身をミドル層に当てはまると認識されているとのことでした。

人材紹介会社側、そして転職希望者側の意見の一致として、35歳以上が年齢としてのミドルの定義となるようです。

ただし、40代後半や、50代まで歳を重ねてしまうと「シニア層」に分類されてしまうケースもあるようなので、30歳から45歳をおおまかなミドルの基準として考えてもらえればと思います。

年収としての“ミドル”

中間(ミドル)ということで、日本の平均年収を参照していきます。

国税庁が発表している「平成28年分民間給与実態統計調査結果について」によると、日本人の平均年収は421万6千円となっています。

ただ、本稿では男性のミドル層を対象としていますので、男性の平均年収である521万1千円をミドル層の基準と考えていければと思います。

加えて、ミドル層という言葉には管理職や役職付きであること指し示す場合もあります。そのため、ミドル層は平均年収よりもやや高いイメージになるケースもあるでしょう。

それらを踏まえ、今回の記事では(最低500万円以上だが)600万円以上の年収の方をミドル層として進めていければと思います。

2.ミドル層の市場動向|転職成功率は?

ミドル 転職

冒頭で「転職35歳限界説」を否定しましたが、本当にそうなのでしょうか。ここでは、データを元にミドル層の市場動向について探っていきたいと思います。

ミドル層を対象とした求人数の増加

エン・ジャパンの「ミドルの求人動向調査」を参照すると、以下のようなデータが発表されています。

転職コンサルタントに「35才以上のミドルを対象とした求人募集は、 どのように変化するか」を聞いたところ、実に85%の方が増加すると回答しました。

またこの数値は2016年よりも着実に増えており、減少すると答えた方はわずか1%となっています。

この背景には60歳または65歳の定年制を廃止し、更に長くケースが増えてきたこと。また人材不足によって、海外経験者やマネジメント経験者など、戦力となる人材であればミドル層でも積極的に登用していきたいという企業側の思惑が推測されます。

ミドルを対象とした、求人募集が増えると⾒込まれる「年収」については、上記のような結果となりました。

600〜699万円までのレンジが60%以上を占め、さらに、その前後の500〜599万円、700〜799万円のレンジでも40%ほどの得票を得ています(複数回答可)。

繰り返しになりますが、平成28年の平均年収は421万6千円(男性は521万1千円)であることから、平均年収以上の高待遇で転職を行うことは十分に可能であることがわかります。

転職成功者の平均年齢の推移

今後の展望として、ミドル層の採用が広がっていくであろうことは分かりました。それでは、実際の転職成功者数は近年どのように変化しているのでしょうか。

人材紹介会社であるパーソルキャリア株式会社が発表した「転職成功者の年齢調査(2017年下半期)」によると、以下のような調査結果を得ることができます。

2007年〜2017年までの10年間で、転職成功者の平均年齢がどのように推移しているかが分かるグラフです。ここ10年のうちに、転職成功者の平均年齢が明らかに高くなっていることがわかります。

また男性は顕著であり、直近の2017年下半期のデータでは32.7歳という年齢まで引き上がっています。

2017年と2007年を比較すると、25歳〜29歳での転職者が10%ほど減少し、他方で35歳以上の転職者が向上していることがわかります。

ミドル層の転職者数が増加した理由については、10年前に存在しなかった業種や職種、技術などに対応するため、若手の採用だけでなく即戦力となる技術者の需要が高まっていることが挙げられます。

また、いわゆる「働き方改革」によって、在宅勤務の導入や長時間労働の是正などミドル層にとって働きやすい環境がより整備されてきたことも理由として考えられるでしょう。

これらのことから、ミドル層の転職は既に活発化しており、かつ、今後さらに増えていく見通しであることが分かりました。「転職35歳限界説」は覆ったと言っても過言ではないでしょう。

3.ミドル層の転職理由

ミドル 転職

今後ますます実現可能性が高まり、人材市場のメインストリームとなるであろうミドル層の転職。では、ミドル層が転職する理由はどのような点にあるのでしょうか。

エン・ジャパンの別の調査「35歳以上のミドルの「転職理由」調査」によると、以下のような調査結果となっています。

ミドル層全体では、「会社の考え・風土が合わない」というネガティブな理由が最も大きな割合を占めていました。しかしながら、年収が1000万円を超えるミドル層では「自分の能力を試したいから」という理由が最も高くなっています。

また、20代の頃と比べて転職理由に変化を感じている方が過半数を超えていることも明らかになっています。結婚や住宅ローン、育児や親の介護など、ライフイベントを経て求めるものが変わってきていることが伺えます。

アンケート結果を見ると、ミドル層の転職は、自身の力を試したいというキャリアアップのための転職と、会社への不満から環境を変えたいというネガティブな転職に二極化されているようです。

ただし、「自分の能力を試したい」「キャリアアップのため」「やりたい仕事に就く」などのポジティブな理由では、年収1000万以上のハイキャリア層の方が高い割合を占めていることに注意が必要です。

この調査では1000万のボーダーで区切られていますが、800以上の高所得者層でも、同様にポジティブな理由のほうが多いのではないかと推測されます。

4.ミドル層のなかで求められている5つの人材

ミドル 転職

そんなミドル層の転職ですが、35歳以上で転職を成功させる方は即戦力となるスキルや専門性を備えている必要があります。

ここでは2018年現在求められているスキルや専門性、さらには需要のある分野について、より詳細に解説していきます。

ポイント1.海外進出を加速させるグローバル人材

海外への進出は企業規模にかかわらず増加傾向にあります。それに伴い、海外拠点のマネジメントや立ち上げを経験しているグローバルな人材は、多くの企業で必要とされています。

また、現在では各社ともアジア諸国への進出が増えており、アジアでのビジネス経験はミドル層でも大きなアドバンテージとなるでしょう。

ポイント2.市場動向を経営戦略に落とし込める人材

海外に限らずとも、日本国内でのマネジメント経験も需要があります。さらに「働き方改革」が取り沙汰される昨今。働き方に関する市場動向を経営戦略に落とし込める人材価値が高まっています。

「ダイバーシティー(多様性)」や「女性活躍推進」など、その時々によって求められる施策は異なります。目標や課題を自ら設定し、それらを突破する施策を打ち出せるマネージャークラスに高い評価が集まっているのです。

ポイント3.企業の株式公開に携わった経験を持つ人材

ITベンチャーを筆頭に、中小企業が新規株式公開(IPO)を行うケースは少なくありません。それに伴い、IPOの準備・遂行経験のある人材が求められています。

IPOの準備に関しては広い分野で人材が求められています。経理・財務部門、またコンプライアンス部門など、企業を上場させるのに必要なスキル全般が高需要だと言っても過言ではありません。

ポイント4.最新技術を習得している人材

昨今では、さまざまな新技術が隆盛を繰り返しています。「AI(人工知能)」や「IoT(モノのインターネット)」、「3Dプリンター」、「ドローン」、「ブロックチェーン」、「仮想通貨」などなど。

これらの新技術を利用した商品・サービスをいち早く提供しようと、多くの企業が躍起になって新規事業開発を推し進めています。となると、当然これらの分野に知見のある人材は重宝されるのは明らかでしょう。

ポイント5.地方への転勤が可能な人材

第2次安倍政権で掲げられた「地方創生」からも垣間見えるように、東京の一極集中を防ぐべく地方の求人も増加傾向にあります。

地方へと転職する「Iターン転職」や、一度都心に出てきた方が再度地元に戻る「Uターン転職」。さらには、生まれ育った場所とは異なる地方へと都心から転職する「Jターン転職」などにも高い需要が集まっているのです。

5.ミドル層の転職は「転職エージェント」を利用すべき

ミドル 転職

そんなミドル層の転職ですが、転職の際には「転職エージェント」という人材紹介サービスの利用を推奨しています。

転職エージェントとは担当制の転職支援サービスです。エージェントと呼ばれる転職のプロがマンツーマンで転職活動のサポートを請け負ってくれます。

サポート内容には、以下などが挙げられます。

  • 現在の市場価値やキャリアプランへのアドバイス
  • キャリアプランや希望に応じた求人の紹介
  • 履歴書や職務経歴書など、応募書類の添削
  • 面接内容のアドバイスや模擬面接の実施
  • 企業との面接日程の調整
  • 面接後に企業担当者へのフォローやプッシュ
  • 内定後の給与交渉、など

これまで紹介してきた通り、ミドル層の転職では自身の市場価値を把握し、企業側にアピールすることが大切です。転職エージェントを利用することで、転職のプロ目線で客観的に武器となる経歴を精査する事ができるのです。

より詳しいサービス内容や使い方、そしてメリットなどの情報は以下の記事に譲ります。今回お伝えしたいのは、数あるエージェント会社の中でも「ミドル層」向けのエージェントを選ぶという点です。

以下では、ミドル層に特におすすめの転職エージェントを紹介していきます。上記記事の「5.失敗しない転職エージェントの選び方」でより詳しく解説していますが、転職エージェントは複数社に登録し、自分と相性の良いエージェントを選択する事が大切です。

以下のエージェントに全て登録し、一緒に転職活動を進めていきたい2〜3人に絞っていくようにしましょう。

5-1.ミドルの転職

ミドル層の転職支援に特化した転職エージェントが、人材紹介会社エン・ジャパンが運営するミドルの転職です。30代、40代の転職に特化したサービスを提供しています。

登録することで、スカウトという形でエージェントからのアプローチが届きます。エン・ジャパンに所属していない他社エージェントからも連絡があるため、新たな可能性を開拓することができます。

また、ミドルの転職の特徴として「気になるリスト」機能があります。求人に対して「気になるボタン」を押すと、企業側からの「エントリーして欲しい」という連絡を受けることができます。双方のマッチングができた状態での選考なので、選考通過率も高くなるでしょう。

多くの求人情報を入手しつつ、カウンセリングにもとづいたキャリア構築を行うことが可能となるのです。

>ミドルの転職公式サイトはこちら

5-2.JACリクルートメント

年収面でのミドル層に強いのがJACリクルートメントです。外資系企業やハイキャリアの求人紹介に強く、一定の年収(500万程度)を超えるミドル層の方は利用すべきエージェントでしょう。

一般の求人には掲載されない転職エージェント独自の求人を「非公開求人」と言いますが、JACリクルートメントでは、さらにJACだけが紹介できる「独占案件」も取り揃えています。

外資系企業の転職に強いのも特徴の一つです。外資系専任のアドバイザーが在籍しているので、英文の応募書類や面接の対策を行ってもらうことも可能でしょう。

>JACリクルートメントの公式サイトはこちら

5-3.リクルートエージェント

ミドル層の方はもちろんのこと、すべての方におすすめできるのがリクルートエージェントです。リクルートエージェントは業界最大規模の求人数を誇り、優良な求人により多くアプローチをすることができます。

転職成功実績も豊富であり、実績に基づいたサポートに定評があります。応募書類の添削や面接の対策なども万全で、同企業の面接で以前された質問などを教えてもらえるケースもあります。

非公開求人数も抜群に多いので、情報収集目的としても利用価値の高い転職エージェント会社です。

>リクルートエージェントの公式サイトはこちら

5-4.DODA(エージェントサービス)

DODA

出典:DODA

大手のパーソルキャリアが運営するDODAは、リクルートエージェントに次ぐ大規模な転職エージェントです。

求人数が多いことはもちろん、利用者の満足度が高いことでも知られています。「キャリアアドバイザーとの相性の良さ」など5分野で満足度1位を獲得しており、ミドル層の転職で大切なキャリアカウンセリングが充実していることが伺えます。

求人情報サイト(一般的な転職サイト)としての機能も備えており、エージェントに紹介されない求人も自分で見つけ出すことが可能です。より積極的に転職活動を行っていきたい方には特におすすめのエージェント会社でしょう。

>DODA(エージェントサービス)の公式サイトはこちら

5-5.ビズリーチ

テレビCMでもお馴染みのビズリーチは、一般的な転職エージェントサービスとは少々システムが異なり、スカウト制を採っています。このスカウト制によって、よりハイクラスな求人を獲得できる可能性を広げることができるのです。

利用者(転職希望者)は経歴を記したレジュメをビズリーチに提出します。そのレジュメはデータベース上で一部公開され、企業から人材採用の依頼を受けたヘッドハンターや、企業の人事担当者から直接アプローチを受けることができるのです。

スカウト制であるため、非公開求人の中でも秘匿性の高い高待遇な求人が多いことが予測されます。ただし、ある程度は受動的な転職活動となるため、年収やスキル面での即戦力性が求められます。他の転職エージェントサービスと併用するようにしましょう。

>BIZREACH(ビズリーチ)の公式サイトはこちら

6.まとめ

ミドル 転職

エン・ジャパンの「35歳以上のミドルの「転職理由」調査」では、転職を考える上での不安についてのデータも回収をしています。

ミドル層の転職では年収を問わず「年齢」「スキル」「年収」についての不安があり、人材市場として(ミドル層の)求人が増えていると言っても「転職35歳限界説」に対する懸念が拭いきれていない事が伺えます。

これらの不安を払拭するには自身のキャリア構築を綿密に行い、市場価値を高めていくしか方法はありません。キャリアプランと実績さえしっかりしていれば、本稿からも分かる通り需要は確かにあるのですから。

キャリアプランや高めていくべきポイントについては、自分ひとりで決めることなく第三者のアドバイスを取り入れるようにしましょう。

その際には転職のフロフェッショナルである転職エージェントを強く推奨します。利用したからと言って必ずしも転職をしなければならないわけではありません。

いまミドル層に身をおいている方も、これからミドル層に突入する方も、来たる将来の不安に備え、一度キャリアカウンセリングを受けてみるのはいかがでしょうか。