「不動産投資で節税しませんか」「税金が戻ってきます」、などと不動産会社の営業マンから勧誘されたことはありませんか。

このような言葉に関心を持ち、不動産投資を検討されている方も多いでしょう。確かに不動産投資で節税することはできますが、決していいことずくめではありません。

そもそもなぜ、「不動産投資で節税できる」という言葉に関心を持ち、現実に不動産投資を始める人がいるのでしょうか。

それは、高所得者に「税金を支払いすぎている」という意識があることがひとつの要因として考えられます。

日本の税制は累進課税となっているため、収入が高ければ高いほど、多くの税金を納めなければなりません。

課税額に応じて一定の控除額があるものの、課税所得が900万円を超えると税率は33%、1800万円を超えると40%になります。

こうした高所得者の悩みに対して、「不動産投資には節税効果がある」というのはあながち間違いではないのです。

しかし、不動産投資は、節税だけを目的に取り組むのは望ましくありません。

この記事では、不動産投資で節税ができると言われる理由とその仕組みと注意点を紹介します。そして、どのようにすれば不動産投資を正しく活用できるのかを解説していきます。

この記事の監修者:キムラ ミキ

株式会社ラフデッサン代表取締役。外資系生命保険会社での営業経験を経て、FPとして独立。
不動産や保険をはじめとした、身近なお金についての執筆だけでなく、講演も多数行っている。

※もし本記事をお読みの中で、不動産投資を本当にやるべきかどうかを迷っている方がいらっしゃいましたら、まずはじめにそれでも僕がワンルームマンション投資をしなかった4つの理由をお読みください。実際に不動産投資を始めようとした筆者の体験談です。

不動産投資で節税できる仕組み

不動産投資で節税できることは事実です。まずはどのようなときに、どのような手法で節税できるかを見ていきましょう。

不動産投資は、大きく分けると、

購入した不動産を売却して得る売却益(キャピタルゲイン)
賃貸契約者に不動産を貸す家賃収入(インカムゲイン)

の2つがあります。このうち、キャピタルゲインは譲渡所得として課税されるため、現在、納めている所得税の節税にはつながりません。

しかし、インカムゲインのほうは不動産所得であり、給与所得と合算することができます。賃貸経営の収支がマイナスになれば、給与所得から差し引けるのです。

つまり、課税所得は減額され、支払う所得税と住民税が少なく済みます。これが、「不動産投資で節税できる」という言葉につながるわけです。

家賃収入が少なくて収支がマイナスになるのは本末転倒ですが、家賃収入を得ながら上手く経費を使って結果的に収支がマイナスになれば、節税に繋げられるといえます。

節税メリット①相続税対策としては優秀

不動産投資のメリットとしては、相続税対策も挙げられます。

相続税については、平成27年の税制改正によって、基礎控除額が大幅に縮小されました。それまで定められていた計算式は以下の通りです。

基礎控除額=5,000万円+1,000万円×法定相続人

この場合、相続人が1人のときの基礎控除額は6,000万円です。しかし、改正後は次のような計算式になりました。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人

改正により、相続人が1人のときの基礎控除額が3,600万円にまで縮小されました。相続財産として都市部に一戸建ての自宅を持ち、ある程度の現金と有価証券を加えたならば、控除枠を超える可能性は高まります。

改正前の基礎控除額では、かなりの資産家でなければ相続税を気にする必要はありませんでした。しかし、改正により状況は大きく変わったのです。

こうした事情を背景に、不動産投資の節税効果が注目されはじめました。

なぜなら、現金や有価証券の場合、相続税は時価で評価されますが、不動産の場合、土地は時価の70%~80%程度の路線価、建物は時価の約50%~70%割程度の固定資産税評価額で評価されます。

加えて、賃貸用の不動産であれば、土地については200㎡まではさらに50%建物については、入居率が100%の場合は固定資産税評価額の70%まで減額されます。これにより、大きな節税効果が生まれるのです。

節税メリット②様々な費用を必要経費として扱える

不動産投資において、必要経費の金額が大きければ、それだけ課税対象となる不動産所得の金額は小さくなります 

不動産所得の金額=収入金額-必要経費
※収入金額は、地代・家賃のほか、権利金、礼金、更新料などです。

中には個人的な支出と思われているものも経費として計上できることがありますので、経費を上手く使いこなせるよう科目を把握しておきましょう。

不動産所得において、必要費と認められるものは多岐にわたり、以下のものが挙げられます。

・土地、建物の固定資産税と都市計画税
・不動産取得税
・登録免許税
・印紙税
・修繕費(資産の耐用年数を延ばす資本的支出は除く)
・損害保険料
・不動産会社への管理手数料
・管理組合への管理費(マンションの場合)
・入居者募集の広告宣伝費
・減価償却費
・共用部分の水道光熱費
・物件ローンの金利分
・通信費
・消耗品費
・交際費
・交通費など

このなかでも、大きな位置を占めるのが原価償却費です。

原価償却費とは、年月とともに価値が下がっていく品に対して、減った分の価値を毎年計上するというものです。建物は年数を経て劣化するため、原価償却費は初年度以降も必要経費として大きな割合を占めることになります。

さらに、情報収集のための本や新聞の購読料、パソコンの購入費、打ち合わせ時の飲食代なども経費として計上することが可能です。

法人化すればさらに節税メリットも

不動産投資は個人ではなく、法人化することによって節税効果をさらに高めることができます。

所得税は、前述したように利益が出れば出るほど、課税額が大きくなります。一方、法人税は%に引き下げられており、課税所得が増えても基本税率は同じです。

また、中小企業者については、各事業年度の所得金額のうち、800万円以下の金額については15%の軽減税率が適用されます(平成31年4月1日以降は19%)。つまり、法人化によって、利益が大きくなるほど、節税につながるのです。

法人税率参考:国税庁|「No.5759 法人税の税率」

個人にかかかる所得税率参考:国税庁|「No.2260 所得税の税率」

個人の給与所得と不動産売却によるキャピタルゲイン(譲渡所得)が損益通算できないことは、すでに説明しました。しかし、法人の場合、法人として行っている事業から得られる利益はすべて損金の通算が可能です。

不動産売却事業によって高額のキャピタルゲインが出ていたとしても、不動産賃貸で赤字があれば、通算して全体の黒字を減らし、法人税を減額できます。

家族を役員にすることで節税できる

また、法人化によって不動産所得の所得分散もできます。個人で不動産投資を行って、高額な不動産所得を得ていると、当然、累進課税で高額な所得税を支払わなければなりません。

しかし、法人化とともに、家族を役員にして報酬を支払うようにすれば、一人当たりの課税所得が下がって全体として節税することができます。

必要経費の幅が広がる

法人化による節税効果はまだあります。法人化することで、個人で不動産投資を行っているよりも、必要経費を多く計上することが可能です。

生命保険の保険料については、個人では年間、最大で12万円までの控除しか認められていません。一方、法人であれば、保険の種類によっては保険料全額を経費として控除することができます。

なぜ「不動産投資は節税対策になる」という勧誘には注意すべきなのか?

不動産投資が、いかに節税効果があるかについて説明してきました。しかしながら、冒頭で述べたように、よいことばかりではありません。

不動産投資も投資である以上、当然、リスクはあります。不動産投資のリスクとして考えられるのは、金融機関からの多額の借り入れによる心理的な不安、入居率の低下、家賃の滞納トラブル、建物の老朽化による維持費の増加などでしょう。

もちろん節税面についてもリスクはあります

ここからはテーマを節税にしぼって、注意点を取り上げていきます。

損益通算できない場合がある

実は、不動産所得にも損益通算できない赤字があります。挙げられるのは以下の通りです。

・別荘などのような生活に必要不可欠ではない資産の貸付の損失
・土地等を取得するための負債の利子に相当する部分の金額で一定のものの損失

問題は、後者です。投資用不動産を購入すると、金融機関から借り入れたローンから、土地と建物のそれぞれに適正に案分した支払利息が発生します。不動産所得が赤字になった際、土地部分についての支払利息の一定額が経費計上できない場合があります

です。このケースでは、土地の利子部分全体が赤字として認められません。こうした状況は、耐用年数が過ぎた中古物件を購入したときに考えられます。

購入代金のほとんどが土地代で、建物自体は価値がゼロに近いからです。その場合、金利の高いローンを設定するとリスクが高まります。

例えば、1年目の不動産所得が1,000万円の赤字で、土地負債利子が100万円であった場合、その100万円は損金通算できずに切り捨てられてしまい、期待したほどの節税効果が発生しないこともあります。

減価償却費の落とし穴

先ほど、建物が年数を経て劣化することから、減価償却費は初年度以降も必要経費として大きな割合を占めることを説明しました。

確かにその通りなのですが、減価償却費による必要経費が認められるのは建物の耐用年数までであることに注意が必要です。

税法では、建物の構造ごとに耐用年数が次のように決められています。

・鉄筋コンクリート(RC)47年
・重量鉄骨34年
・木造22年

耐用年数が短い物件ほど、1年間に処理できる減価償却費は多くなるものの、建物の価格が安い場合は1年分の減価償却費も小さくなり、節税効果もほとんどなくなります。

さらに、減価償却が終わってしまうと、必要経費にならないため、税金の負担が一気に増えることになります。

減価償却費が経費計上できる内に、繰り上げ返済などもしないといけないため、専門家と相談しながらしっかりとプランを作る必要があります。

売却時も課税されるため出口戦略まで検討しておく必要がある

賃貸不動産を売却するときに課税される譲渡所得は、次のような計算式になっています。

譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費-譲渡費用)

このうち、取得費とは土地建物の購入代金と取得に要した費用を合算したものですが、ここから建物の減価償却費を差し引いて計算します。

譲渡費用は、不動産会社の仲介手数料などにかかった費用のことです。

つまり、減価償却された金額が大きいと譲渡所得もそれだけ大きくなり、所得税が増えてしまうため、売却したけど思った以上に手元に残らなかったということもあります。

いつか売却することも考えているのなら早い内に計画を計画を立てるようにしましょう。

不動産投資は、中長期的な資産を築くのであればおすすめである

儲けてこその不動産投資

そもそも、不動産投資は投資なのですから利益を出すために行うべきです。

投資には「将来の利益のために多額の金銭を投入する」という意味もあるように、節税だけを目的とするのは望ましい姿とはいえません。もちろん、減価償却費など、節税のためのテクニックは大切です。

しかし、それを超える家賃収入がなければ、儲けるための不動産投資をしていることにはなりません。

節税は、ひとつのメリットととらえるべきです。

利益が出ていないと認識されれば、金融機関は事業として成立していないと判断するでしょう。そうなると、新たに優良物件を見つけたときに、融資を受けることが難しくなり、次の不動産投資にはつながらなくなります。

継続的で安定的な収益が魅力

では、不動産投資のあるべき姿とはどのようなものなのでしょうか。

それは、自分が所有する不動産で長期にわたって安定的な収益を上げるということでしょう。

資産運用としては、短期間で大きな収益を生む株やFXも人気があります。

しかし、これらは景気や為替など、投資家本人にはどうしようもない外的な環境の変化に左右されるため、極めて大きなリスクを伴います。

これらと比べると、不動産投資は、突発的な事情で大きく損失が発生するリスクは小さく、継続的で安定的な収入が見込めます。中長期的な視点で将来の予測を立てることができ、リスク回避も可能です。

また、不動産賃貸という事業に、投資家本人が経営者として深く関与することができる魅力もあります。

物件の選定、取得から賃貸事業運営、そして出口戦略である物件の売却まで、すべて自分の判断で行うことができるのです。

まとめ|不動産投資に節税効果はあるが、損益通算や減価償却費など「落とし穴」があることを理解することが大切

不動産投資で節税ができるといわれている理由と仕組み、その注意点などについて解説してきました。

給与所得との損益通算や、相続税、必要経費の計上など、確かに不動産投資には節税効果がありますが、その反面、損益通算や減価償却費にも落とし穴がありました。

忘れてならないことは、不動産投資は儲けるための資産運用であり、それも長期的安定的な投資だということです。

この記事を機に、ご自身の不動産投資の方向性を再考してみてはいかがでしょうか。