ワンルームマンション投資は一般のサラリーマンにとって夢のある投資手段だ。

たとえ月給が20数万円しかなかったとしても、数千万円もする新築マンションの一部屋を購入出来、あっという間にその部屋のオーナーとなって家賃収入を得られるようになる。

もし普通の中小企業で働いている20代なら、自己資金で不動産を持てるまでに何十年と貯金をしなければならないだろう。

まさに将来の資産づくりとしてこれほど魅力的な商品はなかなか無いと多くの人は思うはずだ。

半年前の筆者も不労所得生活に憧れて、不動産投資会社の営業マンに話を聞きに行った一人だ。

その際、担当者から魅力的な投資物件を紹介してもらった。

駅から歩いて7分の8階建て新築マンション。サブリース(家賃保証)付きで月々の自己負担額は2万円程度。ほぼリスクは無かった。

だが筆者はその契約書にはサインをしなかった。

なぜならワンルームマンション投資は、いまの自分にとって行うべきではないと判断したからだ。

今回は、筆者が実際に体験したワンルームマンション投資の商談現場のリアルと契約を断った4つの理由を、これから不動産投資を始めたいと思っている人に向けてお伝えしたいと思い筆を執った。

ちなみに、このコラムでお伝えすることはあくまでも一個人の経験談なので、ワンルームマンション投資を一概に否定する目的ではないことはお伝えしておきたい。

それでは始めよう。

ある若者との出会い

筆者は都内のとある中小企業に勤める32歳男性である。

土日を潰していくら働いて会社に貢献しても一向に給料が上がらない待遇に嫌気が差し、どうにかして不労所得や良い条件の資産形成が出来ないかと日頃から投資ネタを探していた。

ある日、たまたま仕事で行った展示会イベントでSという若い男性と知り合った。

何でも彼は大学を卒業したばかりの新入社員で、今は不動産投資会社に勤めているらしい。

投資に少し興味があると話すと、「じゃあ今度一緒に上司とお茶でもしながら投資の話をしませんか?」と彼に誘われた。

投資の知識についてはあまり自信が無かったので、まあ少しは不動産投資の営業もされるだろうなと思いつつも、後日会う約束をした。

ワンルームマンション投資の魅力

後日、待ち合わせ場所の渋谷駅近くの喫茶店へ行くと、そこにはSと知らない男性が並んで座っていた。彼がSの上司らしい。名前はY。手元には高級時計。童顔ではあるが30代前半といった雰囲気だ。

アイスコーヒーを飲みつつお互いの自己紹介をした。

Yは元々ラーメン屋の店長だったらしい。当時は激務で家に帰れないことも多く、転職を決意して今の会社に入った。

自分はいくつも投資を分散させていると言って、仮想通貨のアプリをいくつも見せてもらった。

しかし投資についていくつか質問したが明快な答えは返ってこなかった。話はいつの間にか不動産投資の話になっていた。

 

Y「ところで筆者さんは、不動産投資についてどのようなイメージを持っていますか?」

筆者「何となくお金をたくさん持っている人じゃないと成功しないイメージがありますね。」

そう答えると、Yはカバンの中から紙とペンを取り出し、不動産投資の魅力について語り出した。

30分ほど一方的に熱く語っていたが、話を要約するとこうだ。

・現在の日本は年金が破たんしているから今のうちに資産形成をしておくべきだ。
・サラリーマンの人なら、ワンルームマンション投資が最もリスクが少ないためオススメ。
・節税効果がある。
・空室の心配があるかもしれないが、サブリース(家賃保証)があるから大丈夫。
・この投資はギャンブルではなく長期運用の生命保険代わりだと思って欲しい。

筆者は投資全般のことについて話を聞きにきたつもりだったので、不動産投資の話題一色になって「やっぱりな」という少しがっかりした気持ちになっていた。

しかし、Yの話にはしっかりとしたロジックが通っており、相当訓練されたトークだなと関心したと同時に、これは結構良い話かもしれないとも思った。

 

一通りYが話し終えると感想を聞かれたので、面白いと思った、と答えた。

Yは少しホッとした様子で、筆者さんにぜひ提案をさせていただきたいので、次回までに直近3ヵ月分の給与明細と過去3年分の源泉徴収票を私に送ってくださいと言われた。

どうやらワンルームマンション投資は全ての人が出来るものではないらしい。投資を行うためには、本当にこの人は支払い能力があるのかという銀行の審査を通過しなければいけないとのことだった。

 

自分にその資格があるのかすら分からなかったので、試しに提案を受けたいという回答をした。

2週間後にまた同じ場所で会う約束をして、その日は家に帰った。

魅力的な物件紹介と疑念

後日、また同じ喫茶店でYと会った。Sも同席していた。

Yは早速と言わんばかりにこう切り出した。

Y「川崎駅近くに良い物件が見つかりました。なかなか見つからない条件なので、運が良かったですね。」

彼が差し出した提案書には以下のような内容が書いてあった。

・川崎駅から歩いて徒歩7分
・8階建て新築ワンルームマンション、値段は3500万円
・家賃は月9万円
・サブリース(家賃保証)付き
・実質の毎月自己負担額は2万円

物件の写真を見ると、さすが新築マンションだけあって非常に綺麗な内観だった。

これなら若い人も入居したがるに違いないと思い、次第にワンルームマンション投資に興味が湧いてきた。

筆者「ちなみにサブリースって何ですか?」

Y「サブリースは私たちの会社と筆者さんの間に管理会社が入り、部屋を一括借り上げを行い家賃を保証するシステムのことです。つまり空室が発生したとしてもその管理会社が代理で借り上げているので、家賃は筆者さんに滞りなく支払われるというわけです。このシステムがあれば空室を心配する必要はありません。」

そんな夢のようなシステムがあるのかと自分のなかで衝撃が走った。

しかも銀行への返済額は毎月11万円なのに対し、家賃の9万円が初月からすぐに入金されるらしい。そのため、実質的な自己負担額は2万円程度だ。(つまり、リスクがほとんど無いということか……?)

 

たまらず聞き返した。

 

筆者「この投資にはどのようなリスクがあるのか教えてもらえますか?」

Y「ほとんどリスクは無いですね。あるとすれば筆者さんが月に2万円支払えなくなることくらいでしょうか。でも、月に2万円を払えない状況なんて普通の生活もままならないときですよね。働かれていたらそんなに心配することではないかなと思います。」

 

たしかに、と納得してしまった。これはやってみる価値があるかもしれないと内心心躍った。

しかし冷静さを失ってはいけないと思いこう言った。

 

筆者「わかりました。それでは一度持ち帰らせて考えさせてください。ゆっくり考えたいです。」

 

するとYは、

Y「この物件はとても人気で、もう一部屋しか無いんですよ。だからすぐに決めていただかないと、この条件はもう無いですし審査も受けることが出来ません。」

え!?と思った。

筆者「すぐに決めないと物件が無くなりそうというのは分かりますが、審査が出来ないってどういうことですか?」

Y「物件を購入出来るかどうかは、契約いただいてから銀行に審査申請を通すんですよ。なのでもしお申し込みいただいても投資出来るかわかりません。やりたくてもそれが叶わない人もいますが、筆者さんはおそらく大丈夫ですのでご安心下さい。」

いやいや、銀行がお金を貸してくれるか分からないのに先に契約させるっておかしくないだろうか……?つまり支払い能力が低いもしくは無い人にも契約させているということだろうか。実際の物件もまだ一度も見ていないのに。

頭のなかで一気に様々な疑問が溢れ出してきた。

筆者「それでは一度実際に物件を見せてもらえませんか?」

Yは3秒ほど固まって考えたあと、

Y「いいですよ。では1週間後に川崎駅で待ち合わせしましょう。当日はすぐに契約できるように一応、印鑑を持ってきてください。」

この時、目の前にいる営業マンは筆者のためではなく、自分の営業成績のために提案をしているのではないかという疑いが頭をよぎった。

同時に、もしかしたらこの美味しい投資話は鵜呑みにしないで、しっかりと自分でも調べる必要がありそうだと感じた。

ワンルームマンション投資を止めるべき4つの理由

さて、ここまで筆者がワンルームマンション投資に出会うまでの経緯を書いてきた。

その後の展開を簡単に述べると、川崎の物件は見に行く前に契約を断った。

何度か説明の機会を求められ話し合ってみたが、筆者の気持ちは変わらなかった。

投資を断った理由は大きく分けて以下の2つ。

・担当営業マンのYを最後まで信用出来なかったから。
・自分なりに調べた結果、ワンルームマンション投資を行うべきでなない、という結論に至ったから。

この章では2つ目の理由を以下の4つのポイントに分けてそれぞれ解説していく。

①サブリース(家賃保証)契約変更時の空室リスクがある
②売却リスクがある
③節税対策の効果が期待できない
④維持・管理コストがかかる

それでは見ていこう。

①サブリース(家賃保証)契約変更時の空室リスクがある

世間を騒がせたかぼちゃの馬車事件

今年の3月、「かぼちゃの馬車」という女性専用シェアハウスを販売・運営していた不動産会社スマートデイズが物件購入者から提訴されるという事件があった。

なぜ提訴されたかと言うと、サブリース契約で「家賃30年保証」を謳っていたにも関わらず、家賃の支払いを停止したことが主な理由だ。

サブリース契約とは、物件の管理会社が貸主から一括して部屋の借り上げを行い、たとえ空室が出たとしても家賃の支払いを継続的に物件購入者に支払うというシステムだ。

かぼちゃの馬車事件ほど悪質なものは無いにしろ、一般のワンルームマンション投資における営業トークでも頻繁にサブリースという言葉が登場する。

サブリースという仕組み自体が悪いわけではないが、メリットばかりを説明してデメリットに触れない場面に出会ったら注意が必要である。

サブリースによる家賃保証は永年ではない

筆者も担当営業マンからサブリースの話を聞いたときは、ずっと家賃を肩代わりしてくれるなら、リスクも無く安心だと思い込んでいた。

しかしよく調べてみると、サブリース契約は一定期間経過すると、契約が更新・見直しされることになっている場合が多い。

つまり、その更新時期を乗り越えられず空室を発生させてしまった場合、家賃は全額自己負担になる可能性が高いのだ。

しかもその際、管理会社と対等な交渉が出来るとは限らない。

ピカピカな新築時は黙っていても入居者が入るため家賃保証のメリットはそこまで大きくないが、建物が古くなってきて人気が落ちて来た頃にサブリース契約を一方的に打ち切られたら目も当てられないだろう。

これだけ不利な条件が起きる可能性が高いとしても、リスクをしっかりと説明してくれる営業マンは少ないのではないかと思う。

事実、筆者には全くその説明は無く、質問しても流されるだけだった。

②売却リスクがある

新築でも運用直後から7割程度の売却価値に

ワンルームマンション投資で提案される物件は、新築マンションである場合が多い。

都心では未だに人口が一極集中している上、少子高齢化の影響で独身男女のワンルームマンション需要は今後も大きく減ることは無いように思える。

しかも新築なら、最新設備や免震設計もしっかりしているため、安心する人も多いだろう。

しかし、たとえ新しい物件だとしても運用を開始した途端に、売却価値は7割程度になることをご存知だろうか。

もし何らかの事情で物件を手放さなければならなくなった時、満足に売却出来る可能性がどれくらいあるだろうか。

その物件が何年ごとにいくらくらいで売れるのか、といった情報は契約時に確認しておくべきだろう。

③節税効果が期待出来ない

いい思いが出来るのは最初の数年間だけ…

「ワンルームマンション投資は節税になりますよ!」

一刻も早く物件を売りたい営業マンにとって、契約を迷っている顧客に対し使えるキラーフレーズの一つだ。

たしかにサラリーマンの副業であっても、ワンルームマンションに投資するということは、家賃収入が発生するため事業の一つと見なされる。そしてもちろん課税対象にもなる。

しかしそのフレーズを鵜呑みにしてはならない。

なぜなら、設備費用や賃料を経費に出来るのは最初の数年間だけだからである。

その後は不動産の固定資産税や部屋の管理費用などにかかる経費が家賃収入を上回ってしまう可能性がある。

筆者も節税に効果があると営業マンから説明されたが、外部要因が全く考慮されていない大雑把に作られた節税シミュレーションのみで、あまり実際のイメージが掴めなかったし本当なのか分からなかった。

もし顧客と一緒に中長期的な事業投資プランを考えるつもりが無さそうならば、その営業マンの提案内容や誠実さを一度疑ったほうがいいかもしれない。

④維持・管理コストがかかる

古くなった設備の修理費用は誰が負担する?

新築マンションであっても、契約開始から10年も20年も経過すれば当然、修理やメンテナンスの必要が出てくる。

多くのサラリーマン契約者は、支払契約満了まで少なくとも20年〜30年程度はその部屋と付き合っていかなければならない。

だがその部屋の維持・管理費用は誰が持つのだろうか。

あなたはその部屋のオーナーなのだということを忘れてはならない。

空室対策も必要

また物件が古くなればなるほど、部屋自体の魅力や価値は大きく下がっていく。

入居者を継続的に入れ、空室を発生させないための工夫や対策も必要になってくるだろう。

例えば、壁紙の張り替えや床、設備の付け替えなどの費用が考えられる。

ワンルームマンション投資をただのほったらかし投資と考えている人は注意が必要だ。

まとめ|後日談

契約を断った後、数日経って担当営業だったYから、個人情報を破棄するのでサインをしに来て欲しいと連絡があった。

面倒だなと思いつつ待ち合わせ場所に行くと、提案の時に見せていた笑顔のカケラも見せず、挨拶も無しに「ここにサインしてください」とぶっきらぼうにただ言われた。

それを見た瞬間、本当にこの人にワンルームマンション投資の契約を頼まなくて良かったなと思った。

今回の経験から得るべき教訓

今回の経験から筆者が得るべき教訓は以下だ。

・少しでも不自然な点を感じたら徹底的に調べて自分で納得すること。契約者が納得していないのに契約を急かすような様子があったら疑うこと。

・ワンルームマンション投資が全て悪いとはもちろん思わないし、自分でしっかりとリスクヘッジできる人にとっては収入源を複数持てるいい投資だと思う。しかし、自分でコントロールせずに全部他人任せにしてしまうと、本当にその営業マンの言葉通りの未来が来るのかは分からない。

・投資物件を調べることはもちろんだが、相手が本当に信用に足る人間なのかは慎重に見極める必要がある。

一般のサラリーマンにとってワンルームマンション投資を行うということは、決して気軽な買い物ではない。

何千万円もの借金を背負い、数十年に渡って銀行に返済していくメリットが本当に今の自分にとってあるのだろうか、とよく考えてみてから契約書にサインをして欲しい。

この記事がこれから不動産投資をしようと考えている人の参考に、少しでもなれば幸いである。