逓増定期保険(ていぞうていきほけん)は、死亡保障などの保険金が逓増(だんだん増加)していき、最大で保険金が5倍となる点が魅力の法人向けの保険商品です。

医療保障の内容は同じ逓増定期保険でも商品によって異なる保障が用意されており、死亡保障、生活障害保障、三大疾病、介護保障などがあります。

経営者の万が一の事態に備えたり、解約したときの返戻金を退職金に充てることもできます。

下記に逓増定期保険の主な特徴をまとめました。

・死亡保障等の保険金が最大5倍まで増加する
・支払保険料は一定
・支払保険料を損金計上できる
・保険期間に限りがある
・満期保険金はない
・満期に被保険者の年齢が45歳を超えていなければいけない
・解約返戻金がピークに達するのが早い
・解約返戻金が、払込保険料額と同程度〜超えることもある

支払保険料を損金計上できること、解約返戻金が高額であることから、節税対策としても人気のある保険商品です。

ただし、その魅力の裏には注意点もあり、しっかりと対策していないと節税対策にならないどころか、大きく損をしてしまうこともあります。

この記事では、逓増定期保険の中でも特に重要な特徴と注意点、節税対策に必要な出口対策について解説していきます。

逓増定期保険の特徴と注意点

逓増定期保険の注意点と特徴

特徴①保険金がスタート時の5倍まで増加する

逓増定期保険のイメージ

逓増定期保険は、だんだんと保険金(死亡保障額)が増加し、最大でその保険金はスタート時の5倍まで増加します。

仮に、加入時はそこまで保障を重視せず、死亡時の保険金を5,000万円でスタートした場合でも、10年、20年と時が経つと保険金も2億5,000万円まで増加するのです。

20年後には会社としても成長し、社員や取引先も多くなっているかもしれません。

そんなときに経営者が死亡したら、会社が被る経済的損失も20年前の比ではないでしょう。

逓増定期保険は、会社の成長に合わせて保険金額も上がっていくため、経営者の死亡に伴う死亡退職金の支給や残っている負債の精算など、様々な金銭問題への対策にもなります。

金融機関からみても、万が一の際は保険金で返済してもらえるということは安心材料になり、融資をしやすくなります。

特徴②解約返戻金がピークに達するのが早く、受取額が高額

返戻率は徐々にあがっていき5年〜10年の間にピークを迎えます。

また、ピーク時に解約すると、累計払込保険料の90%以上、中には100%を超える額を解約返戻金として受け取れる場合もあります。

逓増定期保険シュミレーション※引用:メットライフ生命|定期逓増保険

法人で加入する場合、解約返戻金は経営者の退職金に充てるのが一般的な使われ方です。

経営者の退職金は数千万円と高額になりがちです。

毎年の利益の一部を社内で積立てようとすると、積み立てる利益には税金もかかるため、退職金として支払う額以上の金額が必要になります。従って、早いうちから準備をしていないと、十分な退職金を確保できないこともあります。

しかし、逓増定期保険であれば保険料は損金扱いにできる上に、5〜10年と短期で高額な金額を退職金として準備することができます。

経営者側からすれば、20年後の退職を考えるのはイメージしづらいですが、5〜10年程度であれば比較的イメージしやすいため、退職の準備も計画的に進められるというメリットもあります。

注意!解約返戻率のピーク後の減額ペースは早い!

注意点として、返戻率が最大となるのは1年間、かつ、高額といえるのはピーク周辺の2〜3年程度しかないということです。

この期間を逃してしまうと、返戻率はどんどん下がっていき、満期には0%となってしまいます。

返戻金を退職金として利用する場合は、退任のタイミングを計画どおりに確実に行わなければいけない難しさもあります。

また、保険会社には、ピーク時期を連絡する義務はないので、社内で解約のタイミングはしっかりと管理する必要があります。

特徴③損金計上でき、課税の繰り延べ節税ができる

被保険者である経営者や役員の年齢に応じて支払う保険料の一部または全額を損金計上できるため、法人税対策として「課税の繰り延べ節税」ができます。

どういうことか詳細に説明します。まず、保険料を支払うと損金が増え、利益が圧縮されるため、その年の法人税は減ることになります。

毎月の保険料を損金として計上できて税金を支払わずにラッキーだ!と思いきや、返戻金を受け取ったタイミングで雑収入として計上されてしまうため、これが課税の対象となります。

少し例えばが悪いかもしれませんが、分かりやすくいうと、甘い蜜だと思ったものが、最後にはどんでん返しのように大きなダメージを食らってしまうという形でしょうか…

これらを一般的には「課税の繰り延べ」といいますが、これだけでは節税にはなりません。(詳しくは下の図をご覧ください)

課税の繰り延べとは

返戻金を受け取る際は、この雑収入額と同額の損金を出すことで利益を相殺でき、課税を避けることができるのです。

一般的には、返戻金をそのまま経営者の退職金として損金計上することで節税をします。

返戻金の使い道の対策を立てることを出口対策といいます。

逓増定期保険やその他返戻金のある保険については、出口対策まで実行できて初めて節税が成り立つのです。

特徴④保険会社から低利で融資を受けられる

契約者貸付制度」を利用することで、解約返戻金の70%〜90%までなら保険会社から融資を受けることが可能です。

実際には1週間ほどで融資を受けられ、金利は3%程度で複利計算されるのが一般的です。

借入額と利息の合計額が解約返戻金以上になると、保険契約自体が失効してしまう可能性があるため、返済の目処が立たない場合は利用を控えるべきです。

しかし、一時的な資金難であれば、逓増定期保険を早期解約したりせずに、契約者貸付制度を活用してよいでしょう。

注意!保険料が非常に高額でキャッシュフローを圧迫する

逓増定期保険は解約返戻金が高いこともあり、保険料も割高となっています。

先の例の、メットライフ生命の保険でみると、死亡保険金1億円でスタートした場合、保険料は年間約1,100万円にもなります。

また保険料は定額ですので、この額を解約するまで毎年支払い続けることになります。

節税もできて、かつ、短期で退職金の準備ができることを考えると、多くの企業が加入したい保険ともいえますが、高額な保険料はキャッシュフローを圧迫します。

返戻金が高額だとしても、加入中は毎年手元から大金が出ていくの、確実に5〜10年大金を払い続けられる資金力がある企業だけが入れる保険なのです。

出口対策の方法

逓増定期保険の出口対策を考える

一般的には、解約返戻金は役員の退職金に充てることで節税をしますが、退任時期は経営の状況に応じて変わる事もあります。

解約返戻金のピークが近くなったのに、役員の退任を予定より延ばさなければいけないこともあります。 そんな時の選択肢のひとつとなる打開策をご紹介します。

解約返戻金の分割

一度に多額の返戻金を受け取ると、法人税の負担も大きいため部分解約をして返戻金を少しずつ受け取り、法人税負担を分散する方法です。

一例として、解約返戻金のピークをまたいで、3期に渡って1/3ずつ分割して解約することができます。

保険を失効させて数年間キープする

保険料の払込みをやめて保険を「失効」をすることで、数年の間、解約返戻金をキープすることができます。

保険会社によって失効できる期間や条件は異なりますが、一般的には死亡保障がなくなり、返戻率を3年間であればキープすることができます。

失効しても保険契約自体は活きているので、再度保険料を払い込めば以前のように保障も受けられます。

役員の退任時期が予定よりも数年遅れるときに活用できます。

注意!個人への名義変更はリスクがある

近年、よく使われた節税手法として、法人で契約した「低解約返戻金型逓増定期保険」を個人名義に変更することにより、節税効果を得るというものがあります。

低解約返戻金型逓増定期保険とは、一定期間の返戻率が低く、一定期間後に返戻率が急激に上昇するタイプの逓増定期保険です。

結論としては、これは節税というよりは租税回避行為として認定されるリスクがあるため、おすすめはできません。

実際の仕組みとしては、法人で契約した保険を個人に名義変更をするときは、そのときの解約返戻金額を買取価格(譲渡価格)として、個人から法人に支払います。

解約返戻率が上昇する直前に名義変更していれば、結果的に個人は買取格以上の利益を得ることができます。

このスキームを使えば、個人は買取600万円+保険料900万円で1500万円程支払った翌年には、4500万円の解約返戻金を受け取れるなんてこともあります。

現時点ではグレーですが、広く問題視されているスキームです。

名義変更を目的として低解約返戻金型逓増定期保険を契約した数年後に、このスキームが明確に規制される可能性もありますので、名義変更を目的とした加入は控えたほうがいいでしょう。

まとめ|支払う保険料金も高額なため、専門家へ相談し、加入すべきかどうかを決める

メリットがあるのは個人

逓増定期保険は、法人税対策メリットが高く資産形成にも有効な商品です。

ただし、メリットをえるには潤沢な資金と計画性が重要となります。

それさえ注意をすれば比較的短い5〜10年という期間で対策がうてる魅力ある商品です。

それでも、予測できないのが経営ですので出口戦略は複数検討をする必要があります。

保険料も高額でハードルの高い保険ですので、専門家への相談も検討してみてください。