「保障」に付随して「税金対策」というメリットが期待できる保険ですが、選び方を間違えると、「必要のない保障」に保険料を支払った上に「節税にならない」という事態になりかねません。

保険には主に物に対する補償を目的とする損害保険と、人に対する保障を目的とする生命保険に分けられます。そして使い方次第で税金対策となるのが生命保険です。

また、生命保険には個人が加入する個人保険と、法人が加入する法人保険があります。

中小企業の経営者の方などは、どちらの保険に入ったら良いのか迷うことも多いでしょう。

そこで今回は経営者の方向けに、税金対策におすすめの個人保険と法人保険、それぞれの税金対策方法について解説します。

生命保険が税金対策になる仕組み

生命保険が税金対策になる仕組み

生命保険が税金対策になる仕組みは、個人保険と法人保険で異なります。個人保険は所得税が軽減され、法人では損金を計上することにより課税の繰り延べができます。

個人保険は生命保険料控除を活用できる

冒頭でもお話をしましたが、保険には大きく生命保険と損害保険があります。それは、個人も法人も同様です。

法人の場合、どちらも損金として計上ができますが、個人の場合、使える控除が生命保険料控除のみとなります。

損害保険料控除は平成18年の税制改正で廃止されています。現在は地震保険のうち一部のみが地震保険料控除として所得税から控除できます。

この章では、個人が使える控除である生命保険料控除について詳しく見ていきます。

生命保険料控除とは

個人保険は個人で加入するものですから、会社の損金にはできません。ですが、1年の内に支払った保険料は生命保険料控除として個人の所得控除を受けることができます。

所得控除というのは、実際の所得から差し引いて税金を計算できる制度です。医療費控除や社会保険料控除が有名ですね。

所得控除=基礎控除+配偶者控除+医療費控除+社会保険料控除+生命保険料控除+etc

所得控除の一種である生命保険料控除は、旧契約(平成23年12月31日以前に契約したもの)と新契約(平成24年1月1日以降に契約したもの)で適用限度額が異なりますが、新たに契約をする場合は新契約の金額だけ覚えておけば大丈夫です。

生命保険料控除は3つに分類される

生命保険料控除は「新生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「新個人年金保険料控除」の3つをまとめて生命保険料控除として扱われます。

 

それぞれの最高額が4万円、合計で12万円まで控除できます。

 生命保険料控除の節税効果は少ない?

 

控除額というのは実際に税金が減る額ではなく、課税される所得税額が減るだけです。

生命保険料控除はどれだけ多額の個人保険に加入しても最大で12万円ですから、所得税率が最高となる課税所得(年収から各種控除額などを引いた額)が4,000万円以上でも、年間6万円程度の節税にしかなりません。

所得が少なければさらに節税効果は下がります。

年収500万円なら各種控除額をマイナスすると所得税率は10%程度のことが多いですから、およそ※12,000円の節税にとどまります。

もちろん、少しでも節税できればうれしいものですが、人によっては節税効果をほとんど感じないかもしれません。

また、この節税効果を「利回り」などと言って保険加入であたかも利益が上がるような表現をする保険営業マンもいます。

しかし、実際には中途解約で元本割れをするリスクや金利変動によるリスクもありますから、得をする部分だけに焦点をあてて他の貯蓄や投資よりも利回りが良いというのはおかしな話でしょう。

*節税額は住民税10%を含み、復興特別所得税などを加味しない概算額です。

生命保険は相続税もお得になる!

不慮の事故による死亡など万が一の際に受け取った生命(死亡)保険金は、みなし相続財産といって相続財産に含まれ、相続税の課税対象です。

しかし、生命保険金には非課税枠があるため他の相続財産を相続した場合と比べて相続税負担が少なくなります。

生命保険金の相続税非課税額は、相続人1人につき500万円です。この相続人とは、生命保険金を受け取る人の人数ではなく、法定相続人といって相続をする権利のある人の人数ということに注意しましょう。

小規模企業共済等掛金控除なら別枠で控除可能

生命保険料控除の限度額と別枠で控除できるのが、小規模企業共済等掛金控除です。

掛金の全額が控除されるため、人気が高まっています。

小規模企業共済等掛金控除で控除できるのは、中小機構の小規模企業共済掛金の他に、個人型年金加入者掛金(iDeCo)などがあります。これらについては後ほど詳しく解説します。

法人保険は課税の繰り延べ節税を上手に利用

個人保険と比べ、法人保険は多額の税金対策ができます。ただし、控除枠を利用するわけではなく、支払った保険料を損金扱いすることで、保険料支払時の法人税を減らす繰り延べ節税です。

課税の繰り延べとは

返戻金のある保険では、解約時に利益が出て法人税の負担が生じます。単純に毎年損金計上し、返戻金を受け取るだけでは、課税のタイミングを遅らせる(繰り延べさせる)だけです。

解約時の返戻金の使い道(退職金など)を予め計画しておくことで、事業外の利益(返戻金)と事業外の損金(退職金)を相殺し課税を避けるなどの対策が必要です。

法人保険については、別記事、「法人保険とは?一番はじめに確認したい法人税の全体像と節税のカラクリ」でも詳しくご説明しています。合わせてご覧ください。

経営者なら法人保険と個人保険ダブルで節税!

経営者であれば、法人保険で退職金を準備し、個人保険で控除を利用することにより、手元に残る額を増やすことができます。

ただし、法人保険の返戻金は法人が受け取ります。

必要十分な額の保険金が法人に支払われたとしても、退職金の支払いなどで損金計上できる金額には上限がありますから、すべての保険金を法人から個人へ支給できるとは限らないことに注意してください。

また、相続税対策に個人保険の活用ができますが、個人保険でも控除に限度があるため、両方を組み合わせてバランスよく税金対策をすることがポイントです。

経営者も個人保険で節税対策!おすすめはiDecoと小規模企業共済

個人節税 ideco

個人保険には多種多様な商品が存在します。しかし前述のとおり、生命保険料控除には限度額があり、どの商品を選択しても一定以上の節税効果は得られません。

そこでおすすめなのは、掛金を全額控除できるiDeCo」と「小規模企業共済です。

この章ではこれらについて解説していきます。

iDeCoがおすすめな理由

iDeCoは個人で年金を積み立てる私的年金です。

自営業者や企業年金のないサラリーマンを加入対象としていましたが、法改正により2017年から加入範囲が拡大され、20歳以上60歳未満のほとんどの方が加入できるようになり、ここ数年で加入者が激増している人気の私的年金です。

もちろん、経営者も加入できます。

iDeCo とは?

iDeCoは私的年金のひとつですが、生命保険料控除ではなく、小規模企業共済等掛金控除が利用できます。

iDeCoと保険会社の個人年金保険との違いは、運用するのが保険会社ではなく、加入者自身ということです。金融機関を選択し、積み立てる金額を決め、運用する商品を自ら選びます。

そのため将来もらえる年金の額が一定ではなく、金融機関の運用結果次第で変動します。

保険商品というよりは資産運用ですが、元本保証型のものもあります。

iDeCo の節税効果

iDeCoは節税効果が高いことで注目されています。

支払った掛金が小規模企業共済等掛金控除として全額控除されるうえに、運用益は非課税になります。

さらに一時金として受け取る場合には退職所得扱いになり、退職所得控除が受けられます。年金として受給を受ける場合は公的年金等控除の対象です。

ただしどちらの控除にも限度額がありますから、他に退職金や公的年金を受け取る場合には節税効果を得られない場合もあります。

年金として受け取る場合の控除額

公的年金は65歳以下で年間70万円以下、65歳以上で年間120万円以下までは非課税ですから、iDeCoを年金で受け取った際の年額と公的年金の受給年額が120万円以下であれば、非課税になるためメリットが大きいと言えます。

一時金として受け取る場合の控除額

一方、一時金として受け取る場合、勤続年数に応じて退職所得控除額が変動します。

これは、会社からもらう退職金と合わせた額になりますので注意しましょう。

退職所得控除額は勤続年数20年超で800万円+70万円×(勤続年数-20年)で計算されます。勤続年数20年以下では、40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)です。

退職所得控除額の枠はそれほど多くありませんから、これを超えてしまうと税金がかかることに注意する必要があります。

iDeCo の注意点

iDeCoは加入者自身が運用しますので、運用先を選ぶ手間が生じます。また、途中で解約できませんから、急に資金が必要になった場合でも引き出すことはできません。※通常は60歳から受け取りが可能です。

ただし掛金の変更はできますから、支払いが難しい場合には掛金を下げることで継続が可能でしょう。掛金の最低額は5,000円です。

また、掛金が全額控除されるといっても、職業などによって掛金の限度額があります。限度額は自営業者で年額816,000円、一般的な中小企業の会社員(経営者を含む)は年額276,000円です。

※引用: 厚生労働省| 個人型年金(iDeCo)拠出限度額

小規模企業共済も掛金が全額控除対象

小規模企業共済は中小企業向けの国の共済で、主に経営者の退職金確保を目的としています。国の運営なので倒産のリスクがないことや、掛金の全額を所得税から控除できるメリットがあります。

少額から積み立てができ、掛金の変更もできるため無理なく加入できます。負担が少ないことから実際に多くの中小企業経営者が加入しています。

小規模企業共済のメリット

・掛金を全額控除できる
・所得税、住民税を節税できる
・掛金相当額を役員報酬に上乗せすることで、実質会社の経費にできる
・受取時は退職所得控除が適用される

ただし、加入期間が短いと容易に元本割れするというデメリットもあります。20年未満の任意解約では元本割れしてしまいます。

小規模企業共済について、詳しくは、「中小企業経営者なら必ず知っておきたい小規模企業共済の節税効果」を合わせてご覧くださ。

法人保険で税金対策をするには?

法人保険 選択

法人保険での税金対策は、出口対策とセットで考えるのが基本です。

出口対策とは、返戻金を受け取る時に退職金を支払ったり、設備投資をしたりして返戻金による利益と相殺し、法人税負担を抑える方法です。

保険料の支払時に損金計上することで法人税負担を減らし、赤字決算時に解約して法人税負担を軽減することもできます。

「法人保険が実際には節税に役立っていないのでは?」という意見もありますが、出口対策が万全でないケースでは、節税にならないのは当然です。

節税というと「法人税額を減らす」ということだけに注目してしまいがちですが、黒字の時に損金をたくさん計上し、赤字の時や大きな支出のある時に利益を戻すことはキャッシュフローの改善や税金対策面でも有効な方法です。

それでは法人保険の中で特に節税におすすめなものを見ていきましょう。

長期平準定期保険

長期平準定期保険は掛け捨ての保険ですが、返戻金があるという特徴から、法人保険の中でも特に注目されている保険です。

支払保険料の1/2を損金計上でき、30代~40代という若い時期に加入し、返戻率が一番高い時期(10〜20年後)に解約すれば100%以上の返戻金を手にできることもあります。

また、ピークの続く期間が長いため、解約時期を調整しやすいというメリットもあります。保障に加え、経営者の退職金確保と節税効果が期待できます。

逓増定期保険

逓増定期保険も長期平準定期保険と同じくピークの返戻率が90%以上と高く、支払保険料の1/2(加入年齢によって異なります)を損金計上できます。

加入から5年後~と、比較的短期間で返戻率のピークを迎えるため、短期間で退職金を用意したい場合などに有効です。

ただしピークの続く期間が短く、その後急激に返戻率が下がるため、ピークを逃すと大きな損失を出してしまう恐れもあります。保険会社は「もうすぐピークが終わりますよ」とは教えてくれませんから、注意しなければいけません。

法人保険にはデメリットも

法人保険のデメリットとして、前述したピーク時期を逃してしまうリスクの他に、保険料の支払いでキャッシュが出ていってしまうことや、出口対策の難しさがあげられます。

節税効果や返戻金の多さにばかり注目せずに、「支払保険料の負担が本当に妥当なものか」「出口対策が計画通りに行えそうか」など、慎重な判断が求められます。

また、実質返戻率といって、節税効果を加味した返戻率を用いて保険商品のメリットを説明する保険営業マンもいます。

実質返戻率は実際の返戻率ではありません。解約時に出口対策ができず、そのまま返戻金に税金がかかる場合のことは全く加味されていない数字です。あくまで期待値ですから用語の意味をよく理解しておくことが必要でしょう。

まとめ|重要なことは、本当に必要な保険かどうかを見極めること

保険 まとめ

保険商品の種類は無数にあり、商品によってメリット・デメリットがあるため、ご自身に向いている保険選びが難しいのが現状です。

保険と聞くだけで拒否反応を示す方もいらっしゃるでしょう。

ですが、保険は利用の仕方次第では、「安心」「老後の資金」「節税」という素晴らしい効果を生み出します。

保険とは長い付き合いになることが多いですよね。加入の際は「利回り」「実質返戻率」などという言葉に惑わされず、本当に必要な保険かどうかを見極めることが大切です。保険選びは慎重に行いましょう。