忘年会の費用は福利厚生費として基本的には経費にできるため、1年間頑張ってくれた従業員に感謝とねぎらいの気持ちを込めてなるべく豪華に開催したいところです。

ただ、あまり豪勢にし過ぎて問題はないか、2次会や3次会の費用は大丈夫なのかなど、気になる点もあります。

折角なので取引先の人も忘年会に呼びたいけど、経費として計上しても問題ないのだろうかなど、考えれば考えるほど確認しておきたい点がたくさん出てきます。

今回は忘年会や新年会の費用を経費として計上するための基準や、よくある質問について解説します。

大見先生この記事の監修者:大見 光男(オオミ ミツオ)

大見税理士事務所 代表。大田区の会計事務所で主に中小の法人と医業、不動産所得がある方を担当し節税対策や申告書の作成に従事。会計事務所にて働きながら税理士資格を取得し、平成29年10月に大見光男税理士事務所を開業。

「だいたい3分でわかる仮想通貨の税金の話」を出版。Amazonの経理・アカウンティング部門でベストセラーに。

3つの要件を満たせば「福利厚生費」として計上できる

経費として計上できる

忘年会や新年会にかかる費用を福利厚生費として計上するためには下記の3つの要件を満たす必要があります。

【要件】
①全従業員が対象であること

②支出する金額は概ね一律で高額ではなく、通常要する程度の常識的な範囲内であること
③現金支給ではないこと 

順に詳しく見ていきましょう。

要件①全従業員が対象であること

会社の全従業員を対象とするため、正社員だけでなく、派遣やアルバイトを含めすべての従業員に幅広く「声掛け」をする必要があります。

ただし、必ずしも全従業員が参加しなければ福利厚生費に計上できないわけではありません。

会社としては全員に声をかけていれば、当日都合が悪く出席できなかったり、小さい子供がいるので参加できなかったりと、本人の都合により参加できない場合は問題ありません。

特定の役員・従業員だけで忘年会を開いた場合はどうなる?

特定の人だけを対象とした支出は、福利厚生費としては認められていません。

例えば「役員だけの忘年会」「幹部職員だけの新年会」は福利厚生費としての損金計上は認められません。

この場合、役員給与・賞与会議費または交際費(社内飲食費)として処理されます。

・役員給与・賞与とする場合は会社の損金にならない上に、個人に所得税が課せられます。

会議費として処理する場合、「通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない範囲」であれば、会議費として全額損金扱いにできます。居酒屋やバーなどで飲食した場合は会議や打合せの場とみなされず、交際費と判断される場合もあります。

・交際費(社内飲食費)として処理する場合、資本金が1億円未満の中小企業の場合、1年あたり800万円までの交際費について損金算入が認められています。

見方を変えると、社内の職員の飲食等にかかる経費はすべて交際費で計上することはできますが、中小企業の場合、交際費は800万円までしか損金計上を認められていません

福利厚生費や会議費としての要件を充たすなら、交際費ではなく福利厚生費や会議費で損金計上した方がいいでしょう。交際費が年間800万円以下であればどちらで計上しても法人税法上の効果は同じになります。

部署や係、各部署から集まったプロジェクトチームなどの単位でも認められる?

会場や業務都合により全員が集まることが不可能な場合には、部署単位での実施でも福利厚生費として認められます。

福利厚生費としての要件は、全職員を対象とするものであり、部署単位の開催でも、全員を対象にしており特定の人だけを対象としたものでなければ問題ありません。 

また、全ての部署が開催できるようにしておくこと、費用について部署間に大きな差がつかないように気を付けてください。

各部署から集まったプロジェクトチーム単位の場合は、全社員が該当しない場合があるので、福利厚生費として計上する際は注意が必要です。その場合は交際費や会議費等での計上を検討しましょう。

参加率は関係ないが注意が必要

参加率は直接関係ありませんが、参加率が50%を切るような場合は、税務調査の際に「本当に全員を対象としているのか」という点を指摘される場合があります。

要件②支出する金額は概ね一律で高額ではなく、通常要する程度の常識的な範囲内であること

忘年会の費用について、いくらまでという明確な基準額はなく、あくまでも常識的な範囲とされています。

よく言われる「飲食代は5000円まで」は交際費における少額飲食代の話であって福利厚生費の判定基準ではありません。(措置法第61条の四第4項第2号及び措置法施行令第37条の5第1項)

例年の旅行費用は1人当たり3万円程度で福利厚生費としていましたが忘年会の費用は同じ3万円でも交際費や賞与にしないといけないのですか?」と質問された場合、「絶対に賞与にしましょう」とは個人的には言い切れないと思います。

要件③現金支給ではないこと

忘年会や新年会に参加できなかった人に現金や商品券を渡すような運用は認められていません。

また忘年会や新年会の中なかで、その年に活躍した従業員に金一封を渡して表彰する会社もありますが、現金または商品券など現金に準ずるものを支給した場合は福利厚生費とは認められません。

表彰した場が忘年会の中というだけですので、実際は従業員に対する賞与の支給です。金一封は給与又は賞与として計上し、受け取った金額は所得税の対象になります。

福利厚生費に該当しなくても他の経費として損金計上できる

福利厚生

これまで説明したとおり、福利厚生費の3つ要件が満たされていない場合でも他の勘定科目で経費として損金計上することは可能です。

福利厚生費以外に適用される勘定科目を下記にまとめました。

科目 特徴
福利厚生費 全員参加対象・一律で高額ではない・現金支給でない場合損金になる
交際費 取引先や従業員との飲食(役員・親族は除く)・1年あたり800万円までは損金になる
給与・賞与 報酬・インセンティブとみなされ損金になるが、課税所得扱い

※突発的な役員報酬は損金不算入

会議費 取引先や従業員との打合せに伴う飲食で通常の会議を逸脱しない範囲なら損金

 

忘年会・新年会の経費に関するよくある質問

質問

2次会・3次会の費用も認められますか?

一般的に2次会・3次会については有志が参加するケースも多いため、「従業員全員が参加するもの」とはならず福利厚生費としては損金計上できません。

ただし、全員に声をかけて、ほとんどの人が近くのカラオケボックスに移動して2次会を行うなど、「従業員全員が参加するもの」「高額でないもの」であれば福利厚生費の要件を満たすので計上が可能です。

実際は社長や上司が何人かに声をかけて「行くぞ」といって2次会に行く場合や、若手を連れてキャバクラに繰り出すような場合は上記の要件に当てはまらないため費用計上できません。

メンバーを変えて忘年会をするが、会社全体の忘年会の回数や総額に限度はありますか?

忘年会の回数や総額に制限はありませんが、特定の人が何度も参加している場合は、「支出する金額が概ね一律で…」という点について、福利厚生費の要件に該当しなくなります。小さな会社で全員がすぐに参加できる場合は、複数回開催したとしても福利厚生費としては問題ありません。

忘年会のレクリエーションに使用した景品などの費用は認められますか?

従業員の慰安やレクリエーションの目的でなされた支出であれば問題ありません。

福利厚生行事については簡易なものが多く、受ける経済的利益の額も少額となるのが一般的です。

一般常識の範囲内であれば、会社がその行事の費用を負担し景品を配布した場合でも、会社から個人に対する給与や賞与とみなされることはありません。

ただし高額な景品を配布した場合は経済的利益の供与とみなされる場合もあります。

また賞金や商品券などを景品として利用した場合は、福利厚生費の要件に当てはまらないため計上できません。給与や賞与として所得税や社会保険が課税されることがあります。

忘年会会場までの行きの交通費、帰りの交通費も経費で落とせますか?

忘年会会場までの交通費について会社がバスやタクシーを用意するなどして交通費を負担する場合は、福利厚生費として計上して問題ありません。

また忘年会の準備のために幹事等が特別な交通手段を使って移動した場合も福利交通費として計上して差し支えありません。

参加者がそれぞれの自宅から会場まで来るときの交通費は一律の費用負担に該当しない部分もあるので福利厚生費ではなく旅費交通費として計上する場合もあります。

忘年会のあとで取引先をタクシーで送る場合、タクシー代は交際費として計上します。

社外関係者を招待した時の費用は経費計上できますか?

あくまでも福利厚生費の支出の対象は従業員です。得意先や仕入先その他事業に関係ある者に対する接待のために支出する費用は交際費が妥当です。

取引先の会社にお呼ばれした際に、気を使って2次会はこちらが負担したが経費で落とせますか?

得意先や仕入先その他事業に関係ある者に対する接待のために支出する費用は交際費に該当します。そのため交際費として費用計上をします。

まとめ|忘年会で使用できる経費の範囲は限られていることを強く認識する

忘年会の経費は限られている

会社の経営者にとって、忘年会は従業員の1年の頑張りに対して、感謝とねぎらいの気持ちを表す大切なイベントです。

また来年も一生懸命頑張ってくれるのであれば、こうした場に経費を使うのは惜しいことではないでしょう。

福利厚生費として計上するには下記の要件を満たす必要があります。

①全従業員を対象とするものであること
②支出する金額が概ね一律で高額ではなく、通常要する程度の常識的な範囲内であること
③現金支給ではないこと 

1年の終わりに忘年会くらいは盛大に行いたいという気持ちや、2次会3次会まで楽しみたい気持ちもあるでしょう。しかし、税務上は経費として認められている範囲は限られています。

経費計上できるケースとそうでないケースはしっかり頭に入れておきましょう。

もちろん税務上で認められている範囲で済ますというものでもないでしょうから、損金不計上であっても、場合によっては、社長のポケットマネーから出してでも、従業員と1年の疲れをしっかりと癒して、新しい年への活力を養いましょう!