「出張旅費で節税したい」と考える経営者の方もいるかと思いますが、基本的に節税のために出張旅費を増やすことは節税の考え方としては間違っています。

しかし、業務上必要で適切な範囲内で支出した出張旅費については、経費とすることで全額損金にできるのは事実です。

そして、出張旅費規程を作成して明確な基準を作ることで、ガバナンス(組織の統治)の強化に繋がり、税務調査で旅費関係について指摘される可能性も下がります。

今回は出張旅費についてよくある「出張旅費が節税になると言われている理由」を始めとした「出張旅費規程を作成するメリット・デメリット」、実際の作り方まで解説します。

大見先生この記事の監修者:大見 光男(オオミ ミツオ)

大見税理士事務所 代表。大田区の会計事務所で主に中小の法人と医業、不動産所得がある方を担当し節税対策や申告書の作成に従事。会計事務所にて働きながら税理士資格を取得し、平成29年10月に大見光男税理士事務所を開業。

「だいたい3分でわかる仮想通貨の税金の話」を出版。Amazonの経理・アカウンティング部門でベストセラーに。

出張旅費規程を定めるメリット

出張

メリット①出張日当を経費計上でき、法人税の節税になる

適正な出張旅費規程を作成し運用することで、交通費宿泊費だけでなく出張日当出張旅費として経費扱いになります。経費の増加は利益の圧縮になり法人税の節税になります。

注意点として、出張日当は「出張お疲れ様手当」ではなく、あくまでも出張に必要な支出に対する「実費精算的性格」を持ちます。

出張に行っている間の給与は通常通り支払われるのですから、基本的に多額である必要性がありませんので、出張日当の認識を誤らないようにしましょう。

メリット②個人の所得税負担を増やさずに現金を支給できる

個人においても支給された出張日当は非課税扱いとなります。

そして、出張日当は実際の支出がなくても一定額を経費にでき、非課税所得にできます

従って、出張日当額と実際の支出との差額(残った額)は、個人の所得税負担を増やさずに会社から個人へ移転できた額なのです。

メリット③事業年度後に支払う消費税の節税になる

国内出張の場合、出張旅費(宿泊費、交通費、日当)は、全額「課税仕入れ」に該当するため、消費税負担を減らすことができます。

「課税仕入れ」とは、消費税を計算する際の取扱方法で「消費税のかかる仕入れ」や「消費税のかかる経費」が対象となります。

ホテル代などには消費税も含まれているため、「間接的に消費税を納税した」ことになり「課税仕入れ」なります。

法人は事業年度終了後2ヶ月以内に消費税を支払いますが、その際「間接的に納税した消費税額=課税仕入れ額」を控除することができます(これを仕入れ税額控除という)。

支払消費税額=課税売上(商品の販売で得た消費税額)―課税仕入れ(仕入れや経費支払時に払った消費税額)

従って、出張旅費を課税仕入れに算入することで、事業年度終了後に支払う消費税額も少なくなるのです。

メリット④経費精算の手間が省ける

出張旅費規程の本来の目的は、「出張旅費の精算手続きを煩雑にしないため」とも言えます。

出張にかかった旅費は実費を清算するのが基本です。しかし、出張中の細かな通信費や外食費などを一つずつのは非常に手間がかかります。

頻繁に出張がある場合はもちろんのこと、会社の規模が大きくなれば人も増え、それだけ精算しなければいけない費用の数が増えます。

精算するのは、出張した本人にとっても、経理担当者にとっても負担が大きいものでしょう。

そのため、出張にかかる費用を精算するための決まり(出張旅費規程)を作成し、旅費の一部を定額方式で清算することにより旅費精算の手間を省けるようになります。

補足:出張による出費の取り扱い

旅費規程_表

出張後の注意点

出張後は出張報告書(内容・成果・経過・かかった経費など)とともに領収書は必ず保管しましょう。※出張日当に領収書は原則必要ありません。

領収書は出張の証拠となり、税務調査で出張の内容を聞かれてもスムーズに対応できます。飛行機のチケットやクレジットカードの利用明細でも大丈夫です。

また、出張先での外食費については、取引先の接待が目的ならば出張日当には含めず交際費となります。

出張旅費規程のデメリット

出張手当

出張旅費規程を定めることのデメリットは、役員だけでなく、従業員にも出張日当を支払うことになりますから、支出が増えるということです。

そもそも、出張旅費規程がなければ従業員に出張日当を支払う必要はありません。

出張日当は実際に出費があったかどうかは関係ないため、実費精算以上の支出が発生する可能性もあります。

出張旅費規程を作る際の注意点

法律上では明確な基準がない

出張旅費規程は個々の会社が独自に定める規程ですので、記載内容に明確な基準はありません。

一番気になる日当額についても一般的な額という曖昧な認識であり、明確な上限額は決められていません。

国税庁のタックスアンサーでも、出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当の取り扱いについては下記のように記載されています。

国内の出張又は転勤のために、役員又は使用人に対して支給した出張旅費、宿泊費、日当については、支給した金額のうちその旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れになります。
※引用:国税庁ホームページより抜粋

必ず根拠を持って作成すること

自社で独自の基準で出張旅費規程を作成し、それに従った経理処理をしていても、常識を逸脱した多額の出張旅費などは、税務調査で否認されてしまう可能性もあります。

逆を言えば「当社の出張旅費は高額ではない」と立証するにはこちらも根拠を提示しなければならないということです。

特に海外出張などは費用が高額になるためチェックされやすいので注意しましょう。

対象者はすべての社員

出張旅費規程の対象は社長や役員だけではなく、すべての社員とします。ただし、役職によって手当の額に差をつけるように規定することは可能です。

出張旅費規程の見本

出張旅費規程のサンプルはさまざまなサイトからダウンロードできます。今回は簡易的な出張旅費規程の例をみてみましょう。

出張旅費規程テンプレートから以下のサンプルデータをダウンロードできます。ご参考までにお使いください。

出張旅費規程の作り方

出張旅費の作り方

次に出張旅費規程の主な記載内容をみていきます。

目的

出張旅費規程の目的を決めて記載します。

例えば「この規程は、役員または社員が社命により出張する場合の旅費およびその手続きに関して定めるものである」のように、何のための決まりなのかということを明記します。

就業規則がある場合はその細則として「就業規則第〇条の規定に基づき」としてもよいでしょう。

適用範囲

出張旅費規程は社長や役員を含む全社員が対象ですから、「本規程は、全社員に対して適用する」などとします。

アルバイトやパートが出張する可能性がある場合は、その旨を明記します。「正社員以外の者も役員の承認を得て本規程を準用できる」などです。

出張の定義と区分

出張の定義を決めて記載します。特に決まった基準はありませんので、会社が個々に決めます。距離や移動にかかる時間、県外かどうかなどを基準にすることがあります。

会社から「〇〇km以上は出張とする」と定めることもあります。

首都圏と地方では交通手段の便利さが異なるため、距離については一概には言えませんが、例えば「出張とは、社員が自宅または勤務地を起点として、片道100キロ以上の目的地に移動し、職務を遂行するものをいう」などと記載します。

日帰り出張と宿泊出張を区分する場合は、それについても明記します。

 

 

「日帰り出張とは片道100キロ以上の目的地に移動し、当日中に帰着することが可能なものである」
「宿泊出張とは片道100キロ以上の目的地に移動し、宿泊を伴うものである」

 

などとします。

距離に加え、日帰り出張の際は現地滞在時間が6時間以上の場合日当も支給するなど、細かな条件を定めることもできます。

旅費の種類

旅費の種類を記載します。

基本的には「交通費」「宿泊費」「日当」とします。

支給額

「交通費」「宿泊費」「日当」それぞれの支給額を決めて記載します。

交通費

交通費は、「役員」「管理職」「その他社員」などに分類して利用できる交通機関の等級を決めておくこともできます。

例えば、飛行機を利用する場合に役員はファーストクラス、管理職はビジネスクラス、その他の社員はエコノミークラスなどです。

会社の状況によっては飛行機に関しては社長であってもエコノミーとするなど、適宜設定を調整できます。

ここで注意したいのが、役員がファーストクラスを利用できるという規定を設定したとしても、実際に利用したのがエコノミークラスならば、ファーストクラスの料金は請求できないという点です。

ただし、ファーストクラスに実際に搭乗し、割引料金を支払った場合には正規料金を請求できます。

宿泊費

宿泊費の金額は明確な基準がないため、それぞれの会社の状況に応じた適切な額を設定します。

適切な額といっても難しいかもしれませんが、一般的には6,000円から16,000円程度と考えておきましょう。

宿泊費は定額精算と定めることで、実際の宿泊費が規定よりも少額だったとしても、定額を経費にできます。

役職ごとに金額を変えることもできます。

日当

日当も役職ごとに金額設定ができます。

また、日当の金額設定も難しいところです。国税庁も出張日当の上限について明示していませんから、同規模同業種企業の相場程度が妥当といえるでしょう。

一般的には役員の宿泊を伴う出張日当が4,000円から6,000円程度です。日帰り出張の場合は、宿泊出張日当の半額程度が妥当と言われています。

出張するときの手続き

実際に出張する時の手続きについても決めておき、記載します。

「出張申請書」を提出することや、「出張旅費精算書」の提出と帰社報告についてなどです。

「出張旅費精算書」には、出張内容・出張旅費の内訳・仮払いを受けた場合の精算額などを記入します。

まとめ|出張が多い・今後増えていく見込みのある企業は出張旅費規程の導入検討を

旅費規程

出張旅費規程には上記の4つのメリットがあります。

・出張が増えるほど煩雑になる経理事務の負担を軽減
・法人税の節税
・消費税の節税
・個人には非課税の収入

注意点は下記があります。

・出張日当は明確な基準がなく4000〜6000円/泊が一般的
・役員だけでなく全社員が対象のため支出額は増える
・定額精算だと実費精算よりも余計に支出額が増える可能性がある
・定額精算でも領収書は必ず保管しておく(日当以外)

出張旅費規程の作成には多少の手間がかかりますが、それ以上のメリットが期待できるでしょう。

出張が多い、今後も増えていく見込みのある会社では、出張旅費規程の導入を検討してはいかがでしょうか。