社用車を利用した節税はよく知られている節税手法です。

車両本体の購入費を「減価償却費」として数年に渡り経費計上することで継続的に節税できるメリットがあります。

基本的には今年度だけなく今後も安定して黒字が見込める場合は有効な節税方法ですが、購入する車両の種類や時期によって節税効果を高めることができます。

そのためにも減価償却費の仕組みを理解する必要があります。

ここでは今回は社用車を購入した際に発生する全ての経費と、節税のポイントや注意点、さらには「結局どの車が一番節税になるのか?」をランキング形式で紹介します。

大見先生この記事の監修者:大見 光男(オオミ ミツオ)

大見税理士事務所 代表。大田区の会計事務所で主に中小の法人と医業、不動産所得がある方を担当し節税対策や申告書の作成に従事。会計事務所にて働きながら税理士資格を取得し、平成29年10月に大見光男税理士事務所を開業。

「だいたい3分でわかる仮想通貨の税金の話」を出版。Amazonの経理・アカウンティング部門でベストセラーに。

1.社用車の保有により発生する費用(経費)は何?どれくらいの額になる?

社用車 費用

社用車の保有形態には購入とリースの2通りがあります。順番に見ていきましょう

(1)社用車を購入する場合

社用車を購入する場合、自動車本体の購入代金だけでなく、自動車の取得に関する費用についても経費として計上することができます。下記は本体価格400万円で購入する場合の内訳の参考です。この章では各項目について説明していきます。

①本体価格 (新車車両本体価格) 400万円)  一括orローン
②諸費用 登録代行手数料 15000  初回のみ
車庫証明取得代行費用 17300  初回のみ
自動車リサイクル料 14050  初回のみ
ナンバープレート料金 1440  初回のみ
③税金 自動車税 51000 毎年
自動車重量税 49200 車検時
自動車取得税 91800  初回のみ
消費税 323823  
④保険料 自賠責保険料 440 車検時

②〜④合計

603653  

〜④合計

4603653  

①本体代金

車両本体の代金です。ただ本体価格が400万円の車を購入しても、400万円全額をその期の経費とすることはできません。一括支払・ローンでの支払にかかわらず、400万円のうちの一部を減価償却費として損金計上することができます。

営業などに使用する自動車の法定耐用年数は6年です(軽自動車は4年)。

新車を購入した場合は6年間に渡って減価償却費を計上することができます。

減価償却費の具体的な計算方法は後ほど説明します。

②諸費用

新車の登録手続きや名義変更などの手続きにかかる費用、車庫証明にかかる費用、ナンバーの取得にかかる費用などです。取得時に支払手数料として費用計上します。

・登録代行手数料:陸運局で名義人を登録する際にかかります。
・車庫証明取得代行費用:警察署に車の保管場所を申請する手続きにかかります。
・自動車リサイクル料:車を解体するときに必要な料金です。※
原則新車購入時に支払います。購入時は資産計上し、手放す際(売却・下取り・廃車時)に費用化します。
・ナンバープレート料:陸運局でナンバープレートを発行する際にかかります。

③税金 

自動車を取得すると「自動車税」「自動車重量税」「自動車取得税」がかかります。取得時に租税公課として費用計上します。

・自動車税:都道府県税・毎年かかります。
・自動車重量税:国税・2年(新車は3年)ごとにかかります。
・自動車取得税:都道府県税・取得時にかかります。(消費税が10%に引き上げられる際に廃止されます)

ちなみに、近年の若年層を中心とした車離れを鑑みて中長期的に課税方法を全般的に見直すことが検討されるようです(H30.11.27政府与党税調)

④保険料

自動車を購入する際に加入する自賠責保険や任意保険に係る費用です。保険料支払い時に保険料として計上します。

・自賠責保険料:交通事故の被害者に対する最低限度の補償を行うための保険です。公道を走る際には必ず加入する必要があります。

1) 障害による損害 120万円
2) 後遺障害による損害 75万円~4000万円
3) 死亡による損害 3000万円

 ・任意保険料:自賠責保険料ではカバーされない部分は任意保険に加入します。年払いまたは月払いで加入します。

 主な補償内容

  1.対人賠償保険:相手方のケガや死亡への補償。自賠責の上限を超える部分をカバー。

  2.対物賠償:他人の車や物などの財物に対する補償。

  3.人身傷害補償保険:運転者本人や搭乗者のケガに対する補償。

  4.自損事故保険:自損事故に対する補償。

  5.車両保険:車両の修理代に対する補償。  

⑤その他

割賦で自動車を購入する場合は、支払っている金額のうち利息部分のみが経費計上できます。割賦で支払う金額全額が経費として毎年計上できるわけではありません。

※本体価格は減価償却費として別に計上します。

(2)リースを利用する場(ファイナンシャルリースを前提)

車のリース契約とは、一定期間(通常3~5年)月々のリース料を支払いながら、車を借りることです。リース料は全額損金計上できます。

リースのメリット リースのデメリット
・当初の資金負担が少ない

・諸費用がリース料にすべて含まれる

・費用が平準化され資金計画が立てやすい

・税金や保険、車検の管理など事務負担が軽減される

・途中解約ができない

・走行距離が想定より長いと追加料金が発生する

・購入に比べて割高になりやすい

・盗難や事故にあったときのリスクが大きい

 

リース会社に毎月支払うリース料の中には「車両代」に加えて「自動車税」「自賠責保険料」「車検費用」「重量税」などが含まれています。所有権(車の名義)はリース会社の名義のため、会社で減価償却費を計上することはありません。

一般的な契約期間は5年で、毎月のリース料支払いの目安としては本体価格の1.5%程度です。

(400万円の車であれば 400万円×1.5%=6万円/月 です)

リース期間終了後は車両を返却するか、再リース料を支払って同じ車を乗り続けることができます。

 ・車両返却の場合:走行距離や使用状況によって追加費用が発生する場合があります。

 ・再リースの場合:当初のリース料に比べると月々の値段は下がる場合があります。

2.社用車を使った節税が向いている会社と購入すべき車

社用車

(1)社用車を使った節税に向いている会社

このような会社は節税効果が得られます。

 1)今年度だけなく今後も安定して黒字が見込める

 2)社用車の導入で収益効果が見込める

 3)ステータスやモチベーションの向上につながる

反対に節税効果が得にくい会社もあります。

 1)利益が出ていないまたは安定した利益が見込めない

 2)社用車の活用で収益効果が見込めない

 3)税務調査で指摘されるリスクがある使用・管理をしている

(2)結局お得なのはどの車か?「リース、新車購入、中古車購入、自家用車の名義変更」

今期の決算対策として社用車の購入をする場合、もっともお得な方法は「自家用車の名義変更(4年落ち)」です。決算直前の場合は「リース(年払い)」です。

購入方法 購入先 お得度 節税額
(4月購入)
節税額
(2月購入)
備考
1位 自家用車の
名義変更
個人 140万円 23.3万円 諸費用不要
2位 中古車購入 法人 140万円 23.3万円
3位 リース 法人 25.2万円 25.2万円 年払い
4位 新車購入 法人 46.6万円 7.7万円

1位「自家用車の名義変更(4年落ち)」個人名義の車を会社名義に変更することを意味します。

4年落ちの場合、償却年数が2年ですので、定率法によって1年目で取得価格の100%を経費計上することが可能です。かつ諸費用が中古車購入に比べればかからないので、もっともお得な方法といえます。

ただ初年度は月割りになるため決算期直前の場合は、リース(年払い)の方法の方がメリットが大きいこともあります。

なお、車両代金の400万円が適正な対価であることを立証する必要があります。

2位「中古車購入(4年落ち)」では、上記と同様の償却年数のため1年目で取得価格の100%を経費計上することができます。

3位「リース(年払い)」では、初年度に1年分のリース料を経費計上することができます。決算期末直前にリースを組んでも1年分のリース料が経費計上できる点はお得です。

4位「新車購入」では、減価償却等でのお得度は高くありません。ただし諸費用は一括で経費計上できる点や、故障が少なく、もし今後売却をする際には残存価値が高い点はお得です。

3.社用車を使った節税の考え方

社用車2

ここからは「なぜ上記のような順位づけになるのか」を考えるために、社用車を使った節税方法の仕組みを具体的に解説します。

(1)購入の場合

ここでは400万円の車を「新車」で購入した場合と「中古車」で購入した場合を比較します。

購入の場合の節税効果を考えるには「減価償却費」を理解し、上手に活用することがポイントです。

※自家用車の名義変更と中古車の購入の違いは購入時の諸費用のみなので、ここでは同じものと捉えます。

①減価償却とは?

減価償却とは購入してから長い期間に使用する設備について、その耐用年数に応じて毎年価値が減耗した部分を経費計上していくものです。

減価償却には定額法と定率法があります。個人事業主は定額法が原則で、法人の場合は定率法が原則ですが、届け出を行えば法人でも定額法で償却を行うことができます。

[定額法と定率法は要図解]

定額法とは毎年一定の金額を償却していく方法です。年度の途中で購入する場合は、購入月から決算月までの月数で按分し、その期の減価償却費を計算します。

定率法は残価に対して一定の割合を掛けて償却します。償却の額は初めの年ほど多く、年とともに減少します。年度の途中で購入する場合は、購入月から決算月までの月数で按分し、その期の減価償却費を計算します。

 

購入当初の償却金額を抑えたい場合や、償却費用を平準化した場合は定額法を選ぶといいでしょう。

 

A定額法の償却金額=B取得金額×C定額法の償却率

耐用年数 C償却率 A償却金額 節税額(実効税率35%)
2年 0.500 200万円/年 70万円
3年 0.334 133.6万円/年 46.76万円
4年 0.250 100万円/年 35万円
5年 0.200 80万円/年 28万円
6年 0.167 66.8万円/年 23.38万円

(定額法の償却金額と節税額:B購入代金400万円の場合)

A定率法の償却金額=B未償却残高×C定率法の償却率

耐用年数 C償却率 A償却金額(初年度) 節税額(実効税率35%)
2年 1.000 400万円/年 140万円
3年 0.667 266.8万円/年 93.38万円
4年 0.500 200万円/年 70万円
5年 0.400 160万円/年 56万円
6年 0.333 133.2万円/年 46.62万円

(定率法の償却金額と節税額:B購入代金400万円の場合)

(1)-1「新車」購入の場合

ここでは決算直前の節税対策として新車を購入したものとします。

減価償却費は定率法を採用。従って耐用年数は「6年」つまり6年間「償却率0.33」が適用されます。上記表参照

<計算例>(簡略化して計算します)

・決算期3月

・購入時期:2月→計上期間は2~3月の2カ月

・購入代金:400万円

・法人税実効税率:35%

定率法(初年度)

購入代金400万円×償却率0.333×計上期間2ヵ月÷年間12ヵ月=償却額22万円

→(節税額)償却額22万円×実効税率35%=節税額7万7000円

(参考)定額法

購入代金400万円×償却率0.167×計上期間2ヵ月÷年間12ヵ月=償却額11万3333円

決算直前に慌てて社用車を新車で購入しても、減価償却費として計上できるのは22万円のみです。キャッシュアウトが400万円と考えると、節税効果がないわけではありませんが手許現金の減少の方が大きいため、あまり効果的とはいえません。

(1)-2「中古自動車」購入の場合

中古自動車の購入は新車に比べると早期に減価償却費の計上ができます。節税効果なら新車より中古車の方が高いです。

法定耐用年数を経過した中古自動車と、法定耐用年数未経過の中古自動車では耐用年数の計算方法が分かれます。

法定耐用年数を経過した中古自動車は、法定耐用年数の20%に相当する期間が耐用年数になります。自動車の場合の耐用年数は6年ですので

6年×20%=1.2年 (端数処理で2年)

端数については、1年未満を切り捨てに、その年数が2年未満の場合は2年とします。そのため法定耐用年数を経過した中古自動車の耐用年数は2年となります。

法定耐用年数の一部を経過している自動車の場合は、本来の法定耐用年数から経過した年数を差し引きした年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数になります。

1年落ちの自動車は (6年―1年)+1年×20%=5.2年 →5年
2年落ちの自動車は (6年―2年)+2年×20%=4.2年 →4年
3年落ちの自動車は (6年―3年)+3年×20%=3.6年 →3年
4年落ちの自動車は (6年―4年)+4年×20%=2.8年 →2年
5年落ちの自動車は (6年―5年)+5年×20%=2年    →2年

<計算例>(簡略化して計算します)

新車同様、決算直前に購入したものとし、減価償却費は定率法で計算します。

・決算期3月
・購入時期:2月
・4年落ち
・購入代金:400万円
・法人税実効税率:35%

耐用年数 C償却率 A償却金額(初年度) 節税額(実効税率35%)
2年 1.000 400万円/年 140万円
3年 0.667 266.8万円/年 93.38万円
4年 0.500 200万円/年 70万円
5年 0.400 160万円/年 56万円
6年 0.333 133.2万円/年 46.62万円

(定率法の償却金額と節税額:B購入代金400万円の場合)

4年落ちの場合は耐用年数が2年なので、2年間「償却率1.00」が適用される。

定率法(初年度)

400万円×1.00×2ヵ月÷12ヵ月=66万6666円

→66万6666円×35%=23万3331円

4年落ちの中古車を購入する場合は、同じタイミングで新車を購入するより3倍以上の減価償却費を計上できることになります。

4年落ち以降の中古車は、償却率が1.00になる(購入代金を全てが対象になる)ため減価償却費が大きくなります。

なお期初に購入した場合は按分する必要がなくなるため

1年間で全額償却することになります。

購入代金400万円×償却率1.00×計上期間12ヵ月÷年間12ヵ月=償却額400万円

 →(節税額)償却額400万円×実効税率35%=節税額140万円

(2)リースの場合

4年落ちの中古車以外に、購入した年に大きく経費計上できるもうひとつの方法は「リースの年払い契約」です。

リース料は全額損金で計上することができます。リース料の支払いは毎月の支払ということが多いですが、契約方法によっては年払いや半年払いを選択できることがあります。

年払いにすると、例えば決算期末直前にリースで購入すれば1年分のリース料を損金で計上することができます。これが月払いのリース料だと決算月までの数カ月分しか計上することができません。

<計算例>(簡略化して計算します)

・決算期3月
・購入時期:2月
・リース代金:400万円
・リース料率:1.5%
・リース料:(月額)6万円・(年額)72万円
・法人税実効税率:35%

なおこの際、翌年度のリース料も年払いで落とさないと、初年度分を単なる前払費用として月割り按分され、差額分が否認されることがあります。初年度を年払いにした場合には翌年以降も必ず年払いにしてください。

4.よくある社用車のQ&A

Q.高級車でも社用車として認められますか?

社用車は会社の業務上で使用する車です。高級車であるかどうかというよりは、どのように会社で使われたのかという点がポイントです。

ハイブランドの会社が大切な取引先や顧客を案内する際などに高級車を使用するケースであれば問題ありませんし、ブランドイメージを高めるために購入するケースもあります。

一方で高級車を購入してもほとんど業務では使用されず、社長の自宅ガレージに置かれている場合などは認められません。

またオープンカーや2ドアのスポーツ車が社用車として認められるかどうかも業種の特性や使用方法によります。

実態として会社の業務で使用されているかどうかがポイントですが、スポーツ車やキャンピングカーなど税務署が見て、一般的な社用車とは認識できない車種は、税金逃れではと疑念を抱かれることもあるので避けた方が無難です。

Q.社用車を私的利用してもいいのですか?

社用車を活用した節税が認められる一方、税務署からも狙われやすいポイントになっています。

社用車を私的利用した場合は、私的に利用している部分を否認されることがあります。

例えば月~金までは社用車として使用されていても、土日に私的に使用されている実態が明らかになった場合は、週7日のうち私的に使用している2日間の分として資産・経費として計上していた2/7を否認されるということもあります。

税務署からの指摘をできるだけ避けるためにも公私の区別や運行管理記録の作成などは必要です。

Q.自家用車を社用車にするメリットは何ですか?

自家用車を購入・保有しても、税務面のメリットはありませんが、社用車とすることで会社にとっては減価償却や維持費用が経費で計上できるというメリットがあります。当然中古車になりますますので、高い償却率で減価償却を行うことができます。

デメリットとしては、社用車にした後も、従来通り使用し続けた場合は、税務署から指摘を受ける可能性があり、会社で計上した費用に対して法人税がかかることや、場合により加算税や延滞税がかかることもあります。

注意点としては「売買価格」と「公私の区別」です。個人で購入した時の金額をそのまま法人に売却することはできません。個人での購入後に減価償却を行ったとして償却差し引いた金額が売買価格となります。

あまり安い金額で、個人から法人に売却した場合は、個人に対して贈与税が発生することもあります。売買契約書を作成し、資金移動も行い形式を整えておきましょう。

公私の区別は、税務署から指摘の多いポイントです。運転日誌や運転記録を作成し、車両の使用・管理は会社が行いましょう。

できれば名義変更もしておきましょう。創業当初などでは見逃されるケースも多いようですが、変更しておいた方が無難です。

Q.過去に税務署に指摘されたケースはありますか?

社用車として購入した車が、業務では利用されず私的に利用されているとして税務署から指摘されるケースは多くあります。

社用車を活用した節税対策が広く知られるようになっており、税務署も社用車が実態として会社で使用されているか、個人の車として使用されていないか、また公私ともで使用されている場合は経費も按分しているかなど細かくチェックされるポイントです。

指摘をされた場合、会社では車両に係る減価償却費が経費と認められず、同時にその車の取得費は個人への役員賞与であると認定されて更正を受けるケースなどがあります。

こうした場合、加算税や延滞税もかかるため、本来支払う税金の倍近くを請求されることもあります。

平成7年10月12日国税不服審判所の非公開裁決にて、社用車として購入したフェラーリについて社用車としての利用実態がなく代表取締役への役員賞与であるとした税務署の指摘に対する不服申し立ての事案があります。

争点はフェラーリの社用車としての利用実態と、経営者個人が公私の区別をしていたかどうかという点でした。(結果としては、社用車としての利用実態と公私の区別が認められたため最終的には更生は取り消されました)

まとめ|新車を買うか、中古車を買うのかで節税の効果は大きく違う

社用車を活用した節税は一般的にも知られていますが、新車を買うか、中古車を買うのかで節税効果は大きく違います。また購入時期を早くすればその分、節税効果が高くなります。こうしたポイントを抑えれば上手に節税していくことができるのです。

一方で税務署からは狙われやすいポイントでもあります。公私の区別をしっかりつけて、運転記録などを残していくことで不要な指摘を受けずに済みます。

社用車をお考えのタイミングであれば、こうしたノウハウを活かして上手に節税しましょう。