税務調査の連絡は電話で突然です。

経理処理や納税を適切に行っている会社であれば「なぜうちの会社が?」と不安に思うことでしょう。

税務調査の対象となる会社は、急に売上が上がったなどの理由がある場合や、税務署側が何かしらの証拠を掴んで調査に来る場合も多いですが、無作為に選ばれる場合もあります。

税務調査の連絡がきてから慌てても、できる事は実はそう多くはありません。

しかし、日頃の処理について的確に自信を持って説明できれば、税務署からの印象を良くすることに繋がるので、スムーズに対応できるだけの準備は行いましょう。

本記事では、税務調査の連絡がきてから、スムーズに調査対応ができるよう、流れと特に注意すべきポイントを説明していきます。

税務調査のスケジュール感と注意点

ここでは税務調査の全体像をイメージするために、スケジュール感と注意点を説明します。

①税務署からの電話が来て、調査の日程・資料の範囲を伝えられる

調査官の印象を良くするために前向きに調査に応じる旨を伝えた上で、下記2点は必ず聞き取りましょう。

日程の確認

税務署からは調査の日程と範囲を伝えられますが、すぐに日程に応じないようにしましょう。

顧問税理士と社長が同席できる日や、繁忙期を避けるなど都合のいい日での日程調整をお願いしましょう。

ここで、調査しやすい環境を整えることを伝えれば、印象も悪くはなりません。

調査範囲の範囲

調査官は過去何年分の調査になるのか、どんな資料を準備するのか。もしくは調査する税務範囲を説明してくれます。

これを元に、どんな調査になるのか想定できます。「過去3〜5年分の資料すべて」が一般的な調査です。

税務調査から電話がかかってきたら最低でもこの2点だけは聞いておけば大丈夫です。

②顧問税理士と日程を決めて、資料の準備をする

調査官が挙げた候補日の中から、顧問税理士と社長が同席できる日程を選び、税務署に返事をします。

また、各種資料の準備の時間は十分に確保する必要があります。

会社の状況によって、どの資料が注視されるかは異なるため、顧問税理士からもアドバイスをもらいながら準備をしましょう。

③税務調査当日(現地調査)の日程と質問イメージ

調査官にもよりますが、税務調査は下記の日程で進んでいきます。

 

・初日(世間話・早ければ更生のための証拠が提示されます。)
・2日目(更生のための証拠・調査)
・3日目(調査・質問、証拠集め)
・4日目(調査・指摘箇所まとめ)
・後日 〜追加のやりとり〜

当日は色々と質問されますが、質問された事に対しては簡潔に答えましょう。

事実確認が多いでの証拠となる書類を揃えたり、特殊な経理処理については経緯説明をできるだけシンプルに答えましょう。専門的な応対は顧問税理士に任せても大丈夫です。

会社のこと意外にも、家族構成や普段の生活状況を聞かれる場合もあります。

これは、法人の費用に個人の生活費が混在していないかをみるため、日々の生活費の相場を割り出し、役員報酬内でまかなえる生活費なのかを確認する意図もあります。

例え完全にプライベートだったとしても豪遊体験などの余計な話は慎みましょう。

下手をすれば、会社経費での出張と私的旅行を混同しているのではと、余計な詮索をされる恐れがあります。

また、調査官は追徴課税できる証拠を掴んできていることも多いです。

既に証拠がある場合は、対策しても覆ることはありません。

しかし、明らかに追徴課税になるといってもその場で怒られる事はありません。

いくつか指摘が入り、税額の更生が行われた場合でも、真摯に受け止めましょう。

指摘された箇所は「日頃の処理で足りなかった点」として受け止め、今後に活かしましょう。

④その後のやりとり

税務調査が終わっても約1ヶ月間は質問、証拠、説明のやりとりが続きます。

もし追加で指摘されたとしても、追徴課税の対象となるまでには、段階を踏んでいきます。

同じ指摘であっても、原因が明確で今後改める意思が強く伝われば、追徴税額が少なくなるよう考慮してくれるケースもあるので、真摯な対応をあくまで心がけましょう。

⑤調査結果の連絡

スムーズに行けば1ヶ月〜1ヶ月半後に税務署から確定した納税額が通知されます。

しかし、東京・大阪などの大都市では比較的若い会社が多くあり、地方では社歴が長い会社が多いなど、地域性がある場合は調査傾向も変わっていくので、上記のスケジュールはあくまでもイメージとして留めておきましょう。

会社の状況によって注意する点は異なる

不動産投資 営業マン

税務調査の対象として選ばれるには、理由があることが多いです。

その理由によって注意するポイントが違うので、下記にあげる状況に心あたりがある場合には適切に対策をしましょう。

①決算書の内容が例年に比べ急激に変わった場合

税務署は過去3年分の決算書を元に調査対象を決めている事が多いです。

例えば

・売上が急激に伸びている場合には、その理由と計上漏れがないか
・外注費などの費用が急激に増えた場合は、その理由と費用として正しいものか

ということが調べられます。

この場合の対策としては、急激に変わった理由をしっかりと説明できるように準備しておきましょう。

 ②過去の調査時に問題があった場合

過去に不正をして重加算税を受けたことや、大きな申告漏れなどにより更生を受けた場合には、その後正しく処理を行っているか確認のための調査が入ることがあります。

この場合の対策としては、過去の修正に基づいてしっかりと処理を行っていることを説明できるようにしておきましょう。

③業種によるもの

景気によって、業種にも好況・不況の影響があります。

好況の場合には売上も上がっているので、しっかり処理が行われているか調査が入ることがあります。

この場合の対策としては特になく、通常と変わらず、日頃の経理処理をしっかりと説明できるようにしておきましょう。

法律の整備が追いついていない新興分野でも、常識的な処理をしていないと法整備後に痛い目をみることもあります。

税務調査で指摘を受けやすい4つの資料とポイント

税務署は下記の資料について詳しく調査することが多いです。

・現金出納帳
・得意先元帳
・仕入元帳
・証憑綴り(しょうひょうつづり)

税務調査では「証憑と情報→元帳の作成→申告書の作成」まで「金額や日付が一貫して正しく記載されているか」を見るのが一般的です。

証憑(しょうひょう)は、レシートや請求書といった取引の証拠となるものです。

仕入れのための請求書(証憑)、販売のための請求書(証憑)など、証憑にも売上・仕入に関わるものなど様々です。

そして様々な証憑をグループ分けしてまとめた「元帳(もとちょう)」と呼ばれる資料に取引額を記載することにより、管理をしているのが通例です。

税務調査時は日々発生する証憑から保管のための元帳まで、隅々まで見られるため整理しておく必要があります。

もし証憑と元帳間で入力ミスや計上漏れが見つかり、利益額が変更されれば、更生の対象となります。

ここでは各資料ごとに、どんなところがポイントとなるのかを説明します。

現金出納帳

現金出納帳は現金の入出金を管理するための元帳で、会社の管理能力を見る指標となるので、まず初めに見られる事が多いです。

調査のポイントは期ズレや計上漏れがないかです。

ここで、ミスや改ざんの疑いがあるような処理が見つかると、売上や仕入等、他の処理でも問題があると思われるので、税務調査の重要な入り口となっています。

得意先元帳

得意先元帳は売上をあげた場合に発生する売掛金を記録するためのものです。

調査のポイントは計上期日や漏れがないかです。

例えば、いつもは振込で入金されるものが、イレギュラーで取引先からの現金渡しとなった場合は計上漏れしやすいので注意しましょう。

他にも、売上の過少申告、着服、改ざんがないか確認されます。

このような疑いをかけられないためにも、日々の売上の入金の流れをひとつの通帳で振込に一本化し、イレギュラーな入金には取引がわかるようなメモを残すなど漏れがないように普段から管理しておきましょう。

また、自社が発行する領収書については、印紙税法に従った印紙が貼り付けられているか必ず見られるので、日頃からしっかりと管理をしておきましょう。

従業員の入れ替えがあった場合には貼り忘れが発生しやすいですが、全て会社側の管理責任となるので定期的に確認をしましょう。

仕入先元帳

仕入先元帳は商品を仕入れた場合に発生する買掛金を管理するためのものです。

調査のポイントは期ズレや漏れがないかです。

また、ここで実際の棚卸在庫の状況についても見られます。

商品を次期に繰り延べる「資産」として計上せず、今期の費用となる「仕入れ」のままで処理されていれば、費用が大きくなる分、利益が少なくなります。

利益が少なくなれば、納める税額も少なくなるので、調査管は棚卸在庫と経理処理が一致しているかを見るのです。

税務調査が決まったら、もう一度棚卸在庫と経理処理が一致しているかを確認しておきましょう。

補足として、メインの商品でないため「棚卸資産」に該当しなくても、来期の資産として計上すべき「貯蔵品」がないかも見られます。

例えば、自社で破棄予定の原材料の残りやトイレットペーパーなど、「雑費」や「備品消耗品費」という費用科目で処理していたが、沢山残ってしまったモノがこれに該当します。

もし残ったモノ(単一種類)の総額が10万円を超えるだけの量が残っているようであれば、しっかりと「貯蔵品」として計上しておきましょう。

証憑綴り

証票綴りとは領収書や請求書・レシートなどの取引の証拠となる証憑原本を綴っているものです。

調査のポイントとしては各元帳や仕分との整合性が見られます。

会社は一年間を通して、膨大な証憑を管理しなければなりません。

例えば、発行した請求書や受け取った請求書は売上・仕入に関わる証憑なので重要ですし、出張のための旅費交通費のレシートは数が多くて綴るのも大変です。

しかし、証憑綴りを丁寧に行っていれば、普段の経理処理も丁寧に行われているというアピールになるため、日頃の管理を決して怠らないようにしましょう。

補足として、旅費での処理においては、目的、旅行計画表、同行した人などを確認されるケースがあります。

事実が説明できるように、旅行計画表などの付属資料も証憑と紐づけて整理しておきましょう。

税務調査で準備すべき書類

基本書類

現金出納帳、仕入れ、売上、経費経理、納税、契約書、領収書、議事録、労務規定、タイムカードは全てひとまとめに保管しておき、調査依頼が来たらすぐに出せるようにしておきましょう。

おすすめの保管方法として、いくつかのダンボールに分け、コピー用紙などで表紙を横に貼っておくと中身がわかりやすく処分もしやすくなります。

表紙には、(◯◯会社 ◯年◯月期決算 保存期間 ◯年◯月 資料の中身例、仕入れ・売上元帳)などと書いておくと確実な管理ができます。

会議の議事録を整備しておく

社内外における会議の議事録は、登記が絡む役員改選などを除くと、税務調査が入るまであまり触れることはありません。

そのため、そもそも毎回の会議の議事録を作っていない、パソコンのデータで作成したまま、未押印(未決裁)のまま保管などが散見されます。

特に、役員報酬の改定などは会計に重要な影響があるため、税務調査前に議事録を確認し整備しておく必要があります。

保管書類から付箋をはずしておく

日々の経理処理の中で付箋を利用する場合には保管書類から外しておきましょう。

付箋を使う場合の多くが、イレギュラーな処理や疑問点がある場合に貼るため、余計な情報を与えないためにも、税務調査が入る事がわかったらもう一度見直して外しておきましょう。

税務調査への一番の備えは日々の処理

日頃から、勘定科目ごとや取引先など帳簿管理しやすい形で構わないのでしっかりと書類整理をしておく事が最も重要です。

日頃の処理がしっかりしていれば、どこを見られても、質問にうまく答えられなくても、正しいという事実が変わることはありません。

税務調査は、日頃の事務処理の結果発表の場なので、毎日の積み重ねが何よりも重要なのです。

日々の経理処理では期ズレに注意

正しい基準日で経理処理を行うように心がけましょう。

同じ取引でも、発注日・請求日・見積日・納品日と、複数の基準日が存在しています。

しかし、好きな基準日を選んでいいのではなく、会社は一貫して同じ基準日を選択しなければなりません。

例えば、備品消耗品を購入した場合に、決算日が発注日と請求日をまたいでいたら、どちらを基準日にするかによって、今期の費用になるか、来期の費用になるか分かれます。

都合のいいように基準日をコロコロ変えていると、利益操作(粉飾)と見られてしまうので注意しましょう。

基準日は経理処理だけでなく、書類を保管するにしても、必ず年度でファイルを分けるように徹底しましょう。

「書類がない」は通用しない

調査時に「書類がない」というのは通用しません。

時間稼ぎは、調査期間を延長されるだけで印象もよくありません。

書類は、日頃から項目別にしっかりと整理、保管をしておく必要があります。

「書類がない」をなくす方法は、原票(保管すべき領収書や請求書)を取引ごと且つ月ごとにファイリングすることです。

そして、ファイリングされたものを基に仕訳などの経理処理を行う。この流れを確実に守る事で実現できます。

取引先から請求書が届いていないので、コピーで対応した場合や、どこかに提示する資料として、原票が必要でコピーを保管していた場合などは、大きな付箋は貼るなどして、原票がきたら差し替えます。

ファイリングした書類を外す(持ち出す)ケースを徹底的に無くし、経理処理も原本からしか仕訳をしない、そして常にファイリングされている状態を保てば書類が失くなる事はまずありえません。

まとめ|税務調査で注意すべきポイントは事前に確認をする

日頃の処理を正しく行っているのであれば、税務調査前に注意すべきことは多くありません。

その中でもあえて再確認すべき点を挙げるなら下記でしょう。

 

・調査官を迎える際には顧問税理士にも同席をお願いする
・下記の書類の整合性を確認する
・現金出納帳
・得意先元帳
・仕入元帳
・証憑綴り
・役員報酬など重要な決定事項の議事録があるか確認する
・余計な付箋などは外す

 

 

経理処理について指摘された場合や、追徴課税があった場合でも真摯に対応しましょう。

今後の正しい処理の方法、正しくできる実務管理方法についてもアドバイスをもらえば今後に活かすこともできます。

税務調査も日々の経理処理を見つめ直す機会と捉えていただければ幸いです。