法人のクレジットカードを作るときには、個人よりも厳しい審査に通過しなければいけません。

決算が赤字のときや創業して間もないときなどは申し込みのハードルが高くなるとはいえ、クレジットカードがないと不便を感じることもあるでしょう。

そんなときに検討したいのが、クレジットカードと同じように商品やサービスの決済に利用することができる法人用のデビットカードです。

通常、クレジットカードが口座から後払いになるのに対して、デビットカードであれば、決済すると同時に口座から引き落としが行われます。また、審査の敷居は低く、気軽に手に入れることができるのです。

この記事では、法人用のデビットカードとクレジットカードを比較して、それぞれどんな人に向いているのかを紹介します。

経営者としてどのようなカードを持つべきか、この記事を参考にしながら判断しましょう。

1.法人デビットカードとは?

法人デビットカードとは?

まず、法人デビットカードについて正しく理解するために、その概要や利用率、メリット・デメリットなどを紹介します。

法人デビットカードの概要

法人デビットカードとは、銀行が発行しているカードで、カードの利用と口座の引き落としがリアルタイムで行われる決済カードです。

クレジットカードと大きく異なる点は、クレジットカードが口座からの後払いになるのに対して、法人デビットカードは支払いのタイムラグがなく、決済すると同時に法人口座から引落されるということです。

また、クレジットカードと同じように、法人デビットカードにもVISAやMasterCardなどの国際ブランドがついており、そのマークの表示があるお店で利用することが可能です。

もちろん、実店舗だけでなくネットショッピングでも使うこともできます。

法人カードの利用率

中小企業と個人事業主を対象としたある調査によると、業務の支払いにクレジットカードまたはデビットカードを利用する人の割合は、全体の49.3%を占めています。

「ビジネス・個人系カードの利用状況」グラフ

引用元:ビジネスデビットカード導入意向は27.4% | VISAより抜粋

従業員数が10人以上の事業所に限ると、その割合は55%に上ります。

一方、同じ調査ではビジネス用クレジットカードの認知度は70%で、ビジネス用デビットカードは36.3%という結果となりました。

ビジネス用デビットカードを使用していない理由を尋ねた回答では、「特に理由がない」「勧誘を受けたことがない」「存在を知らなかった」との意見が上位を占めています。

この調査から、ビジネス用デビットカードを使っていない人は、単に存在や内容を知らなかっただけであるということがうかがえます。

実際、ビジネス用デビットカードの導入意向を尋ねた質問では、従業員数が10人以上の事業所では37.1%と多くの人が導入に前向きであると答えています。

さらに、同じ調査では、ビジネス用デビッドカードの利点を多くの人が好意的に見ていることも明らかになりました。法人口座から引落しができるためキャッシュフローが分かりやすいことや、利用限度額の制限がないこと、支払いの公私分離ができることなどについて、70%以上の人が魅力に感じると回答しています。

こうしたことを踏まえると、デビットカードの利点について認知が進めば、利用率は上回ることが予想できます。

2.法人のデビットカードを持つべきメリット

のデビットカードを持つべきメリット

法人デビットカードにはさまざまなメリットがありますが、代表的なものを3つ紹介しましょう。

黒字の決算書が出せない場合も作成できる

通常、法人のクレジットカードは、個人のクレジットカードよりも審査が厳しくなっているため審査に不安を抱く経営者も少なくありません。

しかし、法人デビットカードは、法人でカードを作る際には必ずと言っていいほど必須加入条件となる「申し込む際の審査」がないカードもあるため、比較的簡単に作成することができます。その理由としては、リアルタイムで口座から引落されるデビットカードは、クレジットカードとは違い貸し倒れのリスクがないからです。

また、場合によっては赤字決算でも申し込むことができるため、経営状態が思わしくないときでも、決算書の提出は不要で作成することができます。

キャッシュフローを正確に把握でき経理業務の手間が省ける

複数の社員が支払った経費の処理は煩雑で、計算や支払いに時間が取られてしまいます。

一方、法人口座から引落される法人デビットカードなら経理業務が楽になるうえ、現金で建て替える場合と比べて未払金が発生するリスクを抑えられます。

社員への支払いに対するタイムラグがないため、未払金が発生することもなく、クレジットカードや現金での支払いと比べて、キャッシュフローを正確に把握しやすくなるのです。

海外でも気軽に利用できる

法人デビットカードを使えば、海外のATMから現地の通貨でお金を引き出すこともできます。

この際の利子はかからず、基本的には空港で両替するよりも交換レートは良くなります。海外出張時も、法人デビットカードを持っていれば現金をたくさん持ち歩く必要はなくなるのです。

法人口座に入っている分だけお金を下ろすことができ、足りなくなったときには日本にいる従業員に口座に入金してもらえばいいので、法人デビットカードは使い勝手がいいといえます。

3.法人デビットカードのデメリット

法人デビットカードのデメリット

便利な法人デビットカードにも、デメリットは存在します。

申し込みの前に、法人デビットカードのデメリットについてもしっかり把握しておきましょう。

引落口座の変更ができない

法人デビットカードは銀行口座と紐づけられたサービスのため、引落口座を変更することはできません。

どうしても変更したい場合は、新しい口座に対応したデビッドカードに切り替える必要があります。

月々の支払いに使えない場合もある

口座に預金があることを前提とするデビットカードでは、賃料・光熱費・通信費といった月々の継続的な支払いができないといったケースが多いです。

なぜなら、クレジットカードは、料金の支払いをカード会社が立て替えますが、デビットカードは決済時に口座からの引き落としとなるため、口座に預金がない場合、支払いが滞ってしまうというリスクがあるからです。

つまり、クレジットカードでは支払い可能でも、デビットカードでは支払い不可なものがあるので注意が必要です。

支払いを先延ばしにできない

クレジットカードは利用してから実際の引落まで1~2カ月ほど余裕があり、回数払いやリボ払いなども選択できます。

一方、デビットカードは支払いを先延ばしにできず、回数払いもできないため、資金繰りに苦労する可能性があります。

このタイムラグがない点はメリットと考えることができますが、一度に大きな金額が動く場合においては不利になる場合があることを覚えておきましょう。

4.法人デビットカードと法人クレジットカードとの違い

法人デビットカードと法人クレジットカードとの違い

法人デビットカードの作成を検討するときに、多くの経営者が比較するのが法人クレジットカードです。

そこで、法人デビットカードと法人クレジットカードにはどんな違いがあるかを紹介します。

【法人デビットカードと法人クレジットカード比較表】

法人デビットカード クレジットカード
審査の通りやすさ ×
支払いフローのわかりやすさ ×
経理の簡略化
使用限度額

法人クレジットカードと、法人デビットカードには以下のような違いがあります。違いを知って、どちらを利用するべきか、自分に合った方法を選ぶ判断材料にしてください。

審査

法人クレジットカードを申し込んだとき、申込者と会社に対して二重に審査が行われます。そのためクレジットカードの審査は比較的難しく、時間がかかる場合があるのです。

一方、法人デビットカードの審査は簡単なもので、比較的容易に手に入れられます。起業間もない時期で会社の実績となるものがなくても作成できるのです。そのため、多額の借り入れがある会社や過去に返済事故のある会社なども、法人デビットカードなら作成できることがあります。

ただし、法人クレジットカードにも敷居が低いカードは存在します。本人確認書類のみで登記簿謄本や決算書の提出が不要なものや、赤字決算でも申し込めるものなどは、比較的審査が緩いと考えて良いでしょう。

支払いフロー

デビットカードでの支払いは、そのまま口座から引き落とされますので、リアルタイムで決済が完了し、支払いフローが分かりやすいです。

一方、クレジットカードでの支払いは、カード会社によって異なりますが、翌月支払いなどになるため、決済から支払いまでにタイムラグが発生します。

経理の簡略化

支払いと同時に会計処理が行われるデビットカードなら、未払金を追跡する手間はかかりません。

支払いをした金額と口座の残高にずれがなく、会計管理がしやすくなるので、事務手続きが軽減され、経理業務を簡略化できます。

限度額の違い

法人クレジットカードの場合、カードが発行されるときに利用限度額も定められます。審査により限度額が決まりますが、一般的に発行当初は信用度がまだ低いため、利用限度額も低めに設定されていることが多いです。

法人デビットカードは口座の預金額に応じて、月々の限度額を自由に決めることができます。限度額の点からすると、デビットカードのほうが自由度は高く、余裕を持たせることができるといえます。

5.銀行別・法人デビットカードの比較

銀行別・法人デビットカードの比較

ここからは、銀行別に法人向けのデビットカードの特徴を紹介します。

メリットデメリットをもとに、審査や年会費、利用限度の大きさなどの基準で8つの銀行を選んで比較してみました。どんな人におすすめかも取り上げるので、デビットカード選びに役立てましょう。

【銀行別の法人デビットカードを簡単比較】

JNB 住信SBI 楽天 みずほ りそな
申し込み条件が厳しくない
利用限度額が大きい
年会費がかからない ×
海外でのATM利用ができる ×

JNB:ネット決済が多い人におすすめ

ジャパンネット銀行

※引用:JNB Visaデビットカード|ジャパンネット銀行より抜粋

ジャパンネット銀行からは、法人・個人事業主・個人を対象に、入会審査なしのデビットカードが発行されています。利用限度額が一日500万円までと高く、インターネットからの変更も可能なので、仕入れなど支出が多いときに心強いです。利用するとweb明細にすぐに反映されるので、取引内容や残高が把握しやすいのも特徴です。

web明細をCVS形式に出力することも可能で、会計ソフトとの互換性も高いです。

さらに、大きな特徴は、カードを発行しなくても利用できる「カードレスVISAデビット」があることです。申し込むとカード番号が発行され、インターネット決済専用として使えます。カード番号は最大4つまで持てるので、部署別・担当者別など分けると管理がしやすいです。

審査に通過できるか不安な人や、ネット決済のみに利用する人などにおすすめです。

住信SBI:海外での利用が多い人におすすめ

ミライノ デビット

※引用:事業用カード | 法人のお客さま | 住信SBIネット銀行より抜粋

住信SBIネット銀行の法人向けのデビットカード「ミライノ デビット」は、審査が不要で年会費もかかりません。国際ブランドはVISAとMasterCardから選べます。

どちらを選んでも、それぞれが提供するビジネスサポートを受けることができます。

利用に応じてポイントがたまり、ポイント還元率はVISAが0.8%以上、MasterCardが0.6%以上になります。一般的な還元率が0.5%程度と言われているため、MasterCardが平均的で、VISAは高めであるといえるでしょう。

確定申告書や決算書などは不要で申し込めるため、会社を立ち上げたばかりでも手に入れやすいです。外貨預金口座から米ドルで支払いもできるので、海外での利用が多い人にも向いています。

VISAのほうは3つのデザインから好きなものを選べるため、カードデザインにこだわりたい人にもおすすめです。

楽天:国内での利用が主な人におすすめ

楽天銀行ビジネスデビットカード

※引用:楽天銀行ビジネスデビットカード(JCB) | カード | 楽天銀行より抜粋

楽天銀行ビジネスデビットカードは、年会費が1000円かかります。

一つの口座につきカードを最高9999枚まで発行できるため、従業員数が多い会社でも必要な分だけ発行しやすいです。従業員に渡しておけばそれぞれが支払いの際に現金を建て替える必要はなくなり、口座は同じなので経理業務も楽にできます。

利用した金額の1%キャッシュバックと、ポイント還元率も高いのも特徴です。

ただし、海外でのATM利用はできないので国内でのみ使用する人や、カードの枚数が必要な人などに向いています。

みずほ:渡航する機会が多いという人におすすめ

みずほビジネスデビット

※引用:みずほビジネスデビット | みずほ銀行より抜粋

みずほ銀行の「みずほビジネスデビット」は年会費が無料で、追加カードを最大10枚まで発行できます。

大きな特徴は、海外旅行傷害保険が付帯されていることです。海外のお店やホテルなどでも利用できるため、渡航する機会が多いならぜひ検討したいところです。

さらに、「VISAPayWAVE」マークのある加盟店ではタッチするだけでスマートに決済ができます。「VISAビジネスオファー」というビジネスサポートもついていて、出張のときや消耗品を調達するとき、会議室を確保したいときなどに便利です。

全国の人気のレストランを優待価格で利用できる「VISAビジネスグルメオファー」も、取引先との会食や打ち上げなどで役立つでしょう。

りそな:公共料金の支払いにも利用したい人におすすめ

りそなビジネスデビットカード

※引用:りそなビジネスデビットカード│りそな銀行より抜粋

りそな銀行の「りそなビジネスデビットカード」は、創業したばかりでも事業用の口座を持っていれば申し込めます。

デビットカードでは毎月の公共料金や通信料の支払いができないことが多いですが、「りそなビジネスデビットカード」ならその支払いが可能なのがうれしいポイントです。

年会費が1000円かかりますが、年1回以上利用すれば次年度は無料となるため実質無料で持つことができます。盗難保険や海外旅行保険もついているため、万一のときにも安心です。

2020年6月までは利用金額の5%還元と、高還元のキャンペーンも行われているので見逃せません。

会社や事務所の公共料金を支払いたい人や、手厚い保険が欲しい人などにおすすめです。

【番外編】個人事業主におすすめのデビットカード

三菱UFJ:個人事業主におすすめ
三菱UFJ銀行からは、法人向けのデビットカードは発行されていません。個人向けのデビッドカード「三菱UFJデビット」はあるため、個人事業主は申し込みができます。

GooglePayに対応しており、カード情報をスマートフォンのアプリに登録しておけば、スマートフォン一つでスムーズに決済が可能です。ショッピング保険や不正利用補償などもついているので、安心して利用したい個人事業主はぜひ選んでみましょう。

三井住友:手厚い保証を重視したい人におすすめ
三井住友銀行では、法人向けのデビットカードの取り扱いがありません。個人向けの「SMBCデビット」があるが、法人口座で申し込むことはできなくなっています。

そこで、法人代表者や個人事業主が申し込めるクレジットカード「三井住友ビジネスカードforOwners」がおすすめです。

クラシックなら年会費が1250円かかりますが、海外旅行保険やショッピング補償がついています。レンタカーや引っ越しなど、ビジネスシーンで便利なサポートサービスもあるので心強いです。海外出張が多い人や、手厚い補償を重視したい人は選んでみましょう。

ゆうちょ:個人向けJデビットを利用したい人におすすめ
ゆうちょ銀行では法人向けのデビットカードはなく、個人向けの「Jデビット」の取り扱いのみです。

ビジネス用のクレジットカードも取り扱っていないため、ビジネスカードを作りたいなら別の金融機関を選んだほうが良いでしょう。

6.まとめ|デビットカード選びは、銀行別で異なるサービスのメリットを活かそう

まとめ|デビットカード選びは、銀行別で異なるサービスのメリットを活かそう

デビットカードはクレジットカードよりも審査に通過しやすく、支払いにタイムラグがないため経理の負担を軽減できるのがメリットです。

法人デビットカードは複数の金融機関から発行されていて、それぞれに違った特徴があります。

まずは、ポイント還元率や追加できるカード枚数、補償の有無など、どんなことを重視するかをはっきりさせておくことが大切です。

利用シーンや事業内容に合わせた最適な一枚を選べば、支払いをするときや海外出張に出かけるとき、ビジネスサポートを受けたいときなど、さまざまなシーンで強い味方となってくれることでしょう。