転職を考えている人も、そうでない人も、「転職35歳限界説」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。少し前まで、転職は35歳までが限界とされ、35歳を超えると転職の難度が急激に上昇することと言われていました。
しかし、終身雇用という制度が崩壊している近年では、慢性的な人手不足や、新技術に即戦力として対応できる人材が限られている、といった理由も手伝って、ミドル層を対象とした求人は増加傾向にあります。そうはいっても、年齢が上がるに連れて転職難易度が高まるのは間違いありません。本記事ではミドル層の転職活動に焦点を絞り、
- ミドル層の転職市場動向
- ミドル層の転職における失敗例
- 求められるミドル層の人材とは
- ミドル層の転職を成功に導くポイント
を、最新のデータから徹底的に解説していきます。
全て読んでいただき、自分自身と照らし合わせることで、ミドル層で転職を成功させるためには何が必要かが分かるはずです。
ぜひ最後まで、ご覧ください。
目次
1.ミドル層の市場動向|転職成功率は?
冒頭で「転職35歳限界説」を否定しましたが、本当にそうなのでしょうか。ここでは、データを元にミドル層の市場動向について探っていきたいと思います。
ミドル層を対象とした求人数の増加
まずはエン・ジャパンが2020年1月に発表したの「ミドルの求人動向調査」から、ミドル層の転職の実態を紐解いていきましょう。
下記グラフをご覧ください。
これは116人の転職コンサルタントを対象に、「35才以上のミドルを対象とした求人募集は、 どのように変化するか」を聞いたところ、実に66%が増加すると回答しました。
この背景には、若手人材の不足により採用人材の年齢幅を広げざるを得ないため、、戦力となる人材であればミドル層でも積極的に登用していきたいという企業側の思惑が推測されます。
ミドルを対象とした、求人募集が増えると⾒込まれる「年収」については、上記のような結果となりました。
600〜699万円までのレンジが60%近くを占め、さらに、その前後の500〜599万円、700〜799万円のレンジでも40%ほどの得票を得ています(複数回答可)。
国税庁の民間給与実態統計調査によると、日本人の給与所得者の平均年収は440万円と言われていることから、平均年収以上の高待遇で転職を行うことは十分に可能であることがわかります。
転職成功者の平均年齢の推移
今後の展望として、ミドル層の採用が広がっていくであろうことは分かりました。それでは、実際の転職成功者数は近年どのように変化しているのでしょうか。
人材紹介会社であるパーソルキャリア株式会社が発表した「転職成功者の年齢調査(2019年上半期)」によると、以下のような調査結果を得ることができます。
2007年〜2019年まで間で、転職成功者の平均年齢がどのように推移しているかが分かるグラフです。ここ12年のうちに、転職成功者の平均年齢が明らかに高くなっていることがわかります。
また男性は顕著であり、直近の2019年上半期のデータでは32.6歳という年齢まで引き上がっています。
ミドル層の転職者数が増加した理由については、10年前に存在しなかった業種や職種、技術などに対応するため、若手の採用だけでなく即戦力となる技術者の需要が高まっていることが挙げられます。
また、いわゆる「働き方改革」によって、在宅勤務の導入や長時間労働の是正などミドル層にとって働きやすい環境がより整備されてきたことも理由として考えられるでしょう。
これらのことから、ミドル層の転職は既に活発化しており、かつ、今後さらに増えていく見通しであることが分かりました。「転職35歳限界説」は覆ったと言っても過言ではありません。
2.ミドル層の転職理由
今後ますます実現可能性が高まり、人材市場のメインストリームとなるであろうミドル層の転職。では、ミドル層が転職する理由はどのような点にあるのでしょうか。
エン・ジャパンの別の調査「35歳以上のミドルの「転職理由」調査」によると、以下のような調査結果となっています。
ミドル層全体では、「会社の考え・風土が合わない」というネガティブな理由が最も大きな割合を占めていました。しかしながら、年収が1000万円を超えるミドル層では「自分の能力を試したいから」という理由が最も高くなっています。
また、20代の頃と比べて転職理由に変化を感じている方が過半数を超えていることも明らかになっています。結婚や住宅ローン、育児や親の介護など、ライフイベントを経て求めるものが変わってきていることが伺えます。
アンケート結果を見ると、ミドル層の転職は、自身の力を試したいというキャリアアップのための転職と、会社への不満から環境を変えたいというネガティブな転職に二極化されているようです。
ただし、「自分の能力を試したい」「キャリアアップのため」「やりたい仕事に就く」などのポジティブな理由では、年収1000万以上のハイキャリア層の方が高い割合を占めていることに注意が必要です。
この調査では1000万のボーダーで区切られていますが、800以上の高所得者層でも、同様にポジティブな理由のほうが多いのではないかと推測されます。
3.ミドル層のなかで求められている5つの人材
そんなミドル層の転職ですが、35歳以上で転職を成功させる方は即戦力となるスキルや専門性を備えている必要があります。
ここでは2018年現在求められているスキルや専門性、さらには需要のある分野について、より詳細に解説していきます。
ポイント1.海外進出を加速させるグローバル人材
海外への進出は企業規模にかかわらず増加傾向にあります。それに伴い、海外拠点のマネジメントや立ち上げを経験しているグローバルな人材は、多くの企業で必要とされています。
また、現在では各社ともアジア諸国への進出が増えており、アジアでのビジネス経験はミドル層でも大きなアドバンテージとなるでしょう。
ポイント2.市場動向を経営戦略に落とし込める人材
海外に限らずとも、日本国内でのマネジメント経験も需要があります。さらに「働き方改革」が取り沙汰される昨今。働き方に関する市場動向を経営戦略に落とし込める人材価値が高まっています。
「ダイバーシティー(多様性)」や「女性活躍推進」など、その時々によって求められる施策は異なります。目標や課題を自ら設定し、それらを突破する施策を打ち出せるマネージャークラスに高い評価が集まっているのです。
ポイント3.企業の株式公開に携わった経験を持つ人材
ITベンチャーを筆頭に、中小企業が新規株式公開(IPO)を行うケースは少なくありません。それに伴い、IPOの準備・遂行経験のある人材が求められています。
IPOの準備に関しては広い分野で人材が求められています。経理・財務部門、またコンプライアンス部門など、企業を上場させるのに必要なスキル全般が高需要だと言っても過言ではありません。
ポイント4.最新技術を習得している人材
昨今では、さまざまな新技術が隆盛を繰り返しています。「AI(人工知能)」や「IoT(モノのインターネット)」、「3Dプリンター」、「ドローン」、「ブロックチェーン」、「仮想通貨」などなど。
これらの新技術を利用した商品・サービスをいち早く提供しようと、多くの企業が躍起になって新規事業開発を推し進めています。となると、当然これらの分野に知見のある人材は重宝されるのは明らかでしょう。
ポイント5.地方への転勤が可能な人材
第2次安倍政権で掲げられた「地方創生」からも垣間見えるように、東京の一極集中を防ぐべく地方の求人も増加傾向にあります。
地方へと転職する「Iターン転職」や、一度都心に出てきた方が再度地元に戻る「Uターン転職」。さらには、生まれ育った場所とは異なる地方へと都心から転職する「Jターン転職」などにも高い需要が集まっているのです。
失敗例から学ぶ、ミドル層の転職を成功に導くポイント
ミドル層の転職活動は、20代の転職とは異なります。
こちらの章では、失敗例やうまくいかなかった例を知り、転職を成功させるための考え方やポイントについて、解説していきます。
転職がうまくいかないケース
まずは転職がうまくいかなかったケースをみていきましょう。
自分自身に当てはまることがないか、一度客観的に比較してみてください。
自分の価値を理解できていない
自分の価値を正しく理解しておらず、高望みしてしまう人が一定数いるようです。
たとえば現在勤務している会社でもらっている給与が、業種や職種の相場より高いにも関わらず、さらに高い年収を希望して転職活動を行うと、その転職活動は失敗に終わってしまいます。
自分の現在の仕事やスキルに対して、客観的な評価が求められます。
転職理由がネガティブ
ミドル層となると、それなりのポジションであるがゆえに、図らずも会社の内情を知ってしまったりなど、悩みも多いものです。しかし、転職理由を聞かれた際に「経営者と意見が合わなかった」「自分は正しい意見を言ったのに聞き入れてもらえなかった」など、職場の不満や批判ばかり並べるようでは、採用担当者へ良い印象は与えません。
むしろ、「採用しても同じ理由で辞めてしまうのではないか」と、ネガティブなイメージを与えてしまいます。
面接で嘘をつく必要はありませんが、伝えるべきことと、言わなくてよいことを区別し、採用担当者へ良い印象を与えられるよう心がけましょう。
立ち振る舞いが横柄
すでにある一定実績があり、キャリアに自信がある人ほど注意したいのが面接時の立ち振る舞いです。
採用担当者や、上司になる人が自分より年下である場合、無意識に傲慢な態度をとってしまう人が稀にいます。
いくら華々しい実績があっても、折り合いのつけられない人を採用する会社はありません。
転職活動は、謙虚な姿勢とフレッシュな気持ちで進めましょう。
転職を成功に導くための考え方やポイント
うまくいかなかったケースを踏まえて、ミドル層の転職活動ではどんなことに気をつけるべきなのか、また、成功のためのポイントは何なのかについて、解説いたします。
未経験の仕事よりこれまでの経験を生かそう
ミドル層の転職で、未経験の職種や業種にチャレンジできないことはありませんが、それであればある程度年収は下がることになります。
新しいことにチャレンジすることが目的の転職なら希望条件が高いままで、未経験の仕事に転職できる可能性はゼロに近いことを理解しましょう。
一方でもし年収を下げたくないのであれば、これまでのスキルやキャリアを活かせる同じ業界や職種に転職する方が堅実と言えます。
希望条件は控えめに
転職において、あまり高い条件を希望してしまうと、なかなか条件の合う求人に出会えない場合があります。
譲れない条件を絞り込み、明確にしておくことは大切ですが、ヘッドハンティングでもない限り高望みはせず、控えめな条件で転職活動を進めていきましょう。
今の職場に留まることも考えてみる
“転職がうまくいかないケース”でもお伝えした通り、もしかすると現在勤めている会社は案外条件の良い会社かもしれません。
また、年収やキャリアの向上のためには本当に転職が必要なのか?といった点も考えて見てください。
スキルを磨いて自社に留まり、実績を重ねる方が、転職よりも確実に年収が上がるかもしれませんし、社内でも信頼のある、重要なポジションに就けるかもしれません。
転職エージェントを利用する
自分の価値がどれくらいのものなのか、転職で年収アップは可能なのか、今の会社に留まった方が良いのか。こうした疑問は、1人で考えていてもなかなか答えを出すことは難しいものです。転職エージェントを利用すれば、転職のプロがこれらの疑問に対して的確にアドバイスを受けることができます。
この転職エージェントについては、次の章で詳しく見ていきましょう。
5.ミドル層の転職は「転職エージェント」を利用すべき
そんなミドル層の転職ですが、転職の際には「転職エージェント」という人材紹介サービスの利用を推奨しています。
転職エージェントとは担当制の転職支援サービスです。エージェントと呼ばれる転職のプロがマンツーマンで転職活動のサポートを請け負ってくれます。
サポート内容には、以下などが挙げられます。
- 現在の市場価値やキャリアプランへのアドバイス
- キャリアプランや希望に応じた求人の紹介
- 履歴書や職務経歴書など、応募書類の添削
- 面接内容のアドバイスや模擬面接の実施
- 企業との面接日程の調整
- 面接後に企業担当者へのフォローやプッシュ
- 内定後の給与交渉、など
これまで紹介してきた通り、ミドル層の転職では自身の市場価値を把握し、企業側にアピールすることが大切です。転職エージェントを利用することで、転職のプロ目線で客観的に武器となる経歴を精査する事ができるのです。
より詳しいサービス内容や使い方、そしてメリットなどの情報は以下の記事に譲ります。今回お伝えしたいのは、数あるエージェント会社の中でも「ミドル層」向けのエージェントを選ぶという点です。
以下では、ミドル層に特におすすめの転職エージェントを紹介していきます。上記記事の「5.失敗しない転職エージェントの選び方」でより詳しく解説していますが、転職エージェントは複数社に登録し、自分と相性の良いエージェントを選択する事が大切です。
以下のエージェントに全て登録し、一緒に転職活動を進めていきたい2〜3人に絞っていくようにしましょう。
5-1.ミドルの転職

出典:ミドルの転職
ミドル層の転職支援に特化した転職エージェントが、人材紹介会社エン・ジャパンが運営するミドルの転職です。30代、40代の転職に特化したサービスを提供しています。
登録することで、スカウトという形でエージェントからのアプローチが届きます。エン・ジャパンに所属していない他社エージェントからも連絡があるため、新たな可能性を開拓することができます。
また、ミドルの転職の特徴として「気になるリスト」機能があります。求人に対して「気になるボタン」を押すと、企業側からの「エントリーして欲しい」という連絡を受けることができます。双方のマッチングができた状態での選考なので、選考通過率も高くなるでしょう。
多くの求人情報を入手しつつ、カウンセリングにもとづいたキャリア構築を行うことが可能となるのです。
5-2.JACリクルートメント

出典:JACリクルートメント
年収面でのミドル層に強いのがJACリクルートメントです。外資系企業やハイキャリアの求人紹介に強く、一定の年収(500万程度)を超えるミドル層の方は利用すべきエージェントでしょう。
一般の求人には掲載されない転職エージェント独自の求人を「非公開求人」と言いますが、JACリクルートメントでは、さらにJACだけが紹介できる「独占案件」も取り揃えています。
外資系企業の転職に強いのも特徴の一つです。外資系専任のアドバイザーが在籍しているので、英文の応募書類や面接の対策を行ってもらうことも可能でしょう。
5-3.リクルートエージェント

出典:リクルートエージェント
ミドル層の方はもちろんのこと、すべての方におすすめできるのがリクルートエージェントです。リクルートエージェントは業界最大規模の求人数を誇り、優良な求人により多くアプローチをすることができます。
転職成功実績も豊富であり、実績に基づいたサポートに定評があります。応募書類の添削や面接の対策なども万全で、同企業の面接で以前された質問などを教えてもらえるケースもあります。
非公開求人数も抜群に多いので、情報収集目的としても利用価値の高い転職エージェント会社です。
5-4.DODA(エージェントサービス)

出典:DODA
大手のパーソルキャリアが運営するDODAは、リクルートエージェントに次ぐ大規模な転職エージェントです。
求人数が多いことはもちろん、利用者の満足度が高いことでも知られています。「キャリアアドバイザーとの相性の良さ」など5分野で満足度1位を獲得しており、ミドル層の転職で大切なキャリアカウンセリングが充実していることが伺えます。
求人情報サイト(一般的な転職サイト)としての機能も備えており、エージェントに紹介されない求人も自分で見つけ出すことが可能です。より積極的に転職活動を行っていきたい方には特におすすめのエージェント会社でしょう。
5-5.ビズリーチ

出典:ビズリーチ
テレビCMでもお馴染みのビズリーチは、一般的な転職エージェントサービスとは少々システムが異なり、スカウト制を採っています。このスカウト制によって、よりハイクラスな求人を獲得できる可能性を広げることができるのです。
利用者(転職希望者)は経歴を記したレジュメをビズリーチに提出します。そのレジュメはデータベース上で一部公開され、企業から人材採用の依頼を受けたヘッドハンターや、企業の人事担当者から直接アプローチを受けることができるのです。
スカウト制であるため、非公開求人の中でも秘匿性の高い高待遇な求人が多いことが予測されます。ただし、ある程度は受動的な転職活動となるため、年収やスキル面での即戦力性が求められます。他の転職エージェントサービスと併用するようにしましょう。
6.まとめ
エン・ジャパンの「35歳以上のミドルの「転職理由」調査」では、転職を考える上での不安についてのデータも回収をしています。
ミドル層の転職では年収を問わず「年齢」「スキル」「年収」についての不安があり、人材市場として(ミドル層の)求人が増えていると言っても「転職35歳限界説」に対する懸念が拭いきれていない事が伺えます。
これらの不安を払拭するには自身のキャリア構築を綿密に行い、市場価値を高めていくしか方法はありません。キャリアプランと実績さえしっかりしていれば、本稿からも分かる通り需要は確かにあるのですから。
キャリアプランや高めていくべきポイントについては、自分ひとりで決めることなく第三者のアドバイスを取り入れるようにしましょう。
その際には転職のフロフェッショナルである転職エージェントを強く推奨します。利用したからと言って必ずしも転職をしなければならないわけではありません。
いまミドル層に身をおいている方も、これからミドル層に突入する方も、来たる将来の不安に備え、一度キャリアカウンセリングを受けてみるのはいかがでしょうか。